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新首都圏ネットワーク

山形新聞2003年9月16日

「新学部」案が判明−山大教育学部問題

 全国の国立大で議論されている教員養成課程の再編・統合の流れを踏まえ、新たな教員
養成の在り方を模索している山形大教育学部で浮上した新学部案が15日、明らかになった
。「地域への貢献」に主眼を置き、教員養成を柱に据えた3学科、9コースの構成。方向性
を大きく左右する学部と学科の名称は未定だが、近く文部科学省との事前折衝に入る見通
しだ。
 学内関係者が以前から示唆していた通り、新学部は3学科で決着。学科の開設目的はそ
れぞれ▽地域の教育的課題や教員養成に貢献する▽地域の文化創造に貢献する▽地域の生
活課題に総合的に貢献する―で、「地域に貢献する学部」という色彩が濃い。
 教育学部独自の流れをくむA学科は、小学校、幼稚園、養護学校の教員を養成する。柱
になるのは地元の要望が強い小学校教員の養成で、学科全体の定員は60―80人になる見込
み。「実践教育」「社会臨床」の2コースを開設する。
 B学科は「音楽芸術」「造形芸術」「健康・スポーツ文化」「異文化」の4コースを組
み入れ、中学校の音楽、美術、保健体育の教員を養成。技術と家庭の免許取得を目指す学
生は、「生活デザイン」「生活環境」「生活情報」の3コースを置くC学科が受け入れる。
 現段階の構想では、県と県教育委員会の強い意向を踏まえ、A学科の定員を拡大するな
どし、中学校主要5教科の一種免許状を取得できるシステム導入を目指すとみられる。5教
科の教員養成機能は人文学部(国語、社会、英語)と理学部(数学、理科)にも残す。
 教職に関する授業を開講する全学的な組織「教職研究センター」を設置するなど、総合
大学の利点を最大限に生かし、教員養成について学内で完結する仕組みを意識。その分、
再編・統合協議を行っている南東北3大学の枠組みからは外れる意味合いが強くなる。
 教育学部は24日の教授会で、任期満了に伴う学部長選挙を行う。先の1次投票で得票の
多かった石島庸男学部長、岡田勝英教授、鈴木隆教授の3候補から新システムのかじ取り
を選出する重要な選挙で、開票結果に注目が集まる。

 ◆山形大教育学部の存続問題 文部科学省の意向を受けた山形、宮城教育、福島の南東
北国立3大学の教員養成課程再編・統合協議に伴い、山形大教育学部が昨年5月の教授会で
教員の計画養成を断念、突然の決定に県内で反発の声が高まった。県はその後、6年間の
一貫教育を柱にした試案を提出。路線転換を強いられた山形大は今年3月の「山形県の教
員養成に関する懇談会」で、新しい学部の中に高い教養を備えた小学校教員を養成する学
科を開設する「中間報告」を提示、高橋和雄知事ら県側の理解を得た。山形県内の混乱で
、昨年3月に始まった3大学間の学長協議は休止状態が続いている。