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首都圏ネット事務局です。以下の意見書を発表いたしましたので、お知らせいたしま す。 国立大学法人評価委員会令(概要)に関する意見書 2003年9月17日 国立大学法人法反対首都圏ネットワーク事務局 文部科学省高等教育局は9月5日国立大学法人評価委員会令の概要を示すとともにそ の制定に関するパブリックコメントを実施すると発表した (http://www.mext.go.jp/b_menu/public/2003/03090501.htm)。これに対して本事 務局は、以下の意見書を作成した。 1 政令案そのものの公表の必要性について 政令案に関するコメントを国民から広く募るに当たって、その概要のみを公開し、 政令案そのものを公開しないということについてまずは疑問を呈させていただきま す。後にも述べるように、概要には不明な部分があります。仮に、その不明な部分に 関して政令案には規定があるとすれば、あらためてそれを明らかにした上で、国民か らのコメントの公募をやり直すべきです。いずれにせよ、国民からのコメントを有意 味なものとするには、政令案そのものもあわせて公表すべきであったと言えます。 2 政令案の「概要」についての評価について 本来であれば、政令案そのものの公表を待って、「概要」に対するコメントを提出 すべきなのですが、その保証がない段階においては、次のような評価を暫定的に表明 せざるをえません。この「概要」から理解できる政令案は、国立大学法人の評価基 準、評価方法および評価主体の決定を行政に『白紙委任』するものであり、国立大学 法人を時の治世者、あるいは時の高官の意思に一方的に従属させ、その結果、日本の 学術体制に大きな混乱を引き起こす危険性が極めて大であるがゆえに、根本的な見直 しを必要としています。 3 本政令において考慮されるべき憲法的要請について 国立大学法人法が、国が個々の大学の中期目標を決定し、財政配分を決定するゆえ に、憲法23条に規定されている学問の自由およびそれに内在する大学の自治と緊張関 係を持つことは法案審議中から指摘されてきたことです。それゆえ、評価委員会に関 する政令においては、評価主体および評価基準に関連して、憲法上の要請に応えるた めの仕組みを丁寧に書き込む必要があります。すくなくとも、@評価主体である評価 委員会の政府からの自立性の確保しうるように、評価委員会の委員である評価委員は もとより、部会または分科会の専門委員・臨時委員の資格および任命方法に関する詳 細な規定が設けられるべきであり、また、A評価委員会による短期的評価が学問の自 由に対して萎縮効果を及ぼさないことを確保するために、評価基準の原則および評価 基準策定手続に関する詳細な規定が設けられるべきであるといえます。 4 委員等の資格および任命方法について しかし、政令案の「概要」は以上の要請に応えるものではありません。まず委員等の 資格および任命方法に関して次のような問題点を指摘することができます。 @ 評価委員会委員を「大学又は大学共同利用機関に関して学識経験のある者」か ら任命したところで、政府から独立性を確保することにはなりません。「大学又は大 学共同利用機関に関して学識経験のある者」という資格が、何を意味しているのか自 体が不明瞭で、まず厳密なクラリフィケーションが必要です。仮に、高等教育を直接 の対象としている既存の学会に属する研究者を想定しているのであれば、次のような 問題点を指摘せざるをえません。その高等研究は、依然として学会内にと どまるも のであり、その外にいる広範な大学人による検証にさらされているわけでも、共有さ れているわけでもなく、大学人の見解を代表しているとは到底言えません。それゆ え、 彼ら・彼女らの手による評価が、学問の政府からの自立性を確保するものとは なりえません。 なお、特定の学会が特定の政府審議会と密接な関係を持つこと自 体、すでにその学会のacademic autonomyを疑わせるのに十分であり、そのような学 会からの委員による評価は政府からの自律性を確保しないとの推定が成り立ちうると いうことも付言しておきます。 A 部会および分科会の構成および、それに所属する専門委員・臨時委員につき、そ の任命方法および資格を明らかにすべきです。部会および分科会が重要な役割を果た すにもかかわらず、上述のことについて「概要」には何ら説明がありません。これに 対して、9月4日に国大協国立大学法人化特別委員会に提出された「国立大学法人評価 委員会令案(政令)」 (http://www.shutoken-net.jp/web030914_4hojinkai_txt.html) では、部会又は分科会の専門委員・臨時委員について資格の絞りがな く、文科大臣 によって任命されることとなっていました。この案に示されていた資格および任命方 法では、評価委員会の政府からの自立性は圧倒的に弱体化することは明白です。文科 大臣は、専門委員・理事委員の資格と任命方式に関する案を速やかに公表し、コメン トの公募を再度行うべきです。 B 委員等の文科大臣による任命手続への大学関係者参加が導入されるべきです。 「概要」では、評価委員会委員の任命を文科大臣が行うこととされていますが、評価 委員会の政府からの独立性を確保するためには、職員組合を含む大学関係諸団体から の推薦手続を任命手続の中に導入すべきです。このことは、専門委員・理事委員の任 命についても当てはまります。 5 評価基準の内容および基準を設定する主体について 評価対象、評価基準および基準設定の主体についてまったく規定が存在しないこと が「概要」から窺われます。仮に、何も規定が存在しないのであれば、評価対象およ び評価基準を、文部大臣が任命する委員によって構成される政府からの独立性がまっ たくもって不十分な行政組織に、『白紙委任』するものであるといわざるを得ませ ん。しかし、このような評価基準の白紙委任は、高度の自律性を持って行われるべき 研究教育に対する評価のあり方としてきわめて異常であるといわざるをえません。し たがって、以下のことを政令に書き込むべきことを要求します。 @ 政令の制定により、国立大学法人の評価を行なうあれやこれやの評価機関間の 権限分配ないしは評価対象の振り分けの不分明さという国立大学法人法審議途中から 指摘されていた問題に対する一定の解決を与えるべきです。評価機関の乱立という状 況は、重複審査という無駄、および審査結果の評価機関間の食い違いによる混乱を発 生させるものなので、国家行政組織のあり方としては不正常であるといわざるをえま せん。少なくとも評価委員会による評価の対象を明記すべきです。 国立大学法人の評価が6年間を単位に短期的視点から行われることが、長期的視点に 立って行われる教育研究に萎縮効果を与えることを排除するために、評価委員会が評 価に当たって考慮すべき原則的な事柄をこの政令に明記すべきです。国際文書におい ても、高等教育機関の評価を求める場合には、独立の機関による評価に加えて、その ような機関が評価に当たって考慮すべき事項を、萎縮効果を排除するために、規定す るというスタイルがとられています。関連する国際文書に加えて、国会における議論 および国立大学法人法に対する衆参文部科学委員会の付帯決議を熟慮の上、このよう な事柄を規定すべきです。 |