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新首都圏ネットワーク

「国立大学法人評価委員会令の制定」に関する意見

 

2003917

全国大学高専教職員組合中央執行委員会

 

200395日付の「国立大学法人評価委員会令の制定に関するパブリックコメント」について、ここに意見を提出します。

 

1、「国立大学法人法」は、国立大学法人評価委員会に対し、「文部科学省に、国立大学法人等に関する事務を処理させるため、国立大学法人評価委員会(以下「評価委員会」という。)を置く。」とし、「法人等の業務の実績に関する評価に関すること」の他に、「文部科学大臣が中期目標を定め、又は変更しようとするとき」「法人の積立金処分を大臣が承認しようとするとき」「長期借入金及び債権の発行を大臣が許可しょうとするとき」などに、あらかじめ国立大学法人評価委員会の意見を聴かなければならないという広範な権限を賦与している(第9条第1項,第2項、第30条第3項、第32条第2,333項)。

 私たちは、「国立大学法人法案」が国会に提出されるにあたって、評価委員会に関して次のような見解を示した。

 「これほど広範な権限をもつ評価委員会の組織、所掌事務、委員その他の職員は、政令で定めるとされている(第9条第3項)。公正な評価ができるかどうかは、教育・研究の実施に明るい大学の構成員がどれだけ含まれるか、社会の多様な構成員がどれだけ組織されるかにかかっている。このような重要事項を政令に委ねることは不適当であり、法律によって定めるべきである。」(2003228日、全大教中央執行委員会声明)

 国会審議においても、評価及び評価委員会の公正性・透明性が確保されるか否かが重要な論点となり、参議院文教科学委員会の附帯決議においては、評価に関して特に6項目の決議が行われることとなった。

今回のパブリックコメントの実施は、国会論議を受けてのものであるが、提示された政令案の趣旨・内容は、極めて抽象的で不透明であり、公正性・透明性の確保を図るという点においては極めて不十分と言わざるを得ないものである。

また、法律の不備を補う重要な意味を持つ政令の案であり、大学関係者等の意見を広く聴取すべきであるにもかかわらず、意見集約の期間がわずか2週間足らずに限定されていることは拙速に過ぎると言わざるを得ない。

私たちは、政令案の問題点について、以下に具体的な意見を述べるものである。

  

2、「政令案」の問題点と意見

(1) 委員の選考基準について:政令案は「委員は、大学又は大学共同利用機関に関し学識経験のある者のうちから、文部科学大臣が任命すること等とすること。」としている。

一方、「国立大学法人法」第3条は、「国は、この法律の運用に当たっては、国立大学及び大学共同利用機関における教育研究の特性に常に配慮しなければならない」と規定している。これと関連して、参議院文教科学委員会附帯決議第9項前段は、「国立大学法人評価委員会の委員は大学の教育研究や運営について高い識見を有する者から選任すること」としている。政令の委員選考基準規定は、大学及び大学共同利用機関における教育研究の特性に配慮することを徹底するため、参議院附帯決議に沿った内容に改めるべきである。

(2) 委員会の構成:政令案は、委員会に大学分科会と大学共同利用機関分科会を置き、委員会及び分科会は必要に応じて部会を置くことができるとしている。また、委員20人以内の他に、必要に応じ臨時委員、専門委員を置くことができるとしている。

評価委員会は89国立大学法人、4大学共同利用機関法人を対象とするものであって、部会や臨時委員、専門委員を置いて運営することになることは必至である。部会を設置する基準については、とくに大学関係者の意見を別途求める措置を取ることが必要である。また、臨時委員、専門委員の選考も委員の選考と同一の基準によって行われるべきである。

(3) 評価の基準・方法:評価の基準・方法に関しては、政令案に特段の規定がなく、文部科学省令もしくは評価委員会の検討に委ねるとの考えと判断される。

しかしながら、参議院附帯決議第7項前段は、「国立大学の評価に当たっては、基礎的な学問分野の継承発展や国立大学が地域の教育、文化、産業等の基盤を支えている役割にも十分配慮すること」としており、少なくともこの内容を政令に盛り込むべきである。評価の具体的な基準・方法について、なお時間をかけて決定するというのであれば、その決定のプロセスにおいて大学関係者等の意見を充分に聴取する手続、また改善に絶えず努めることとして、そのプロセスにおいても大学関係者等の意見を充分に聴取する手続を定めておくべきである。

(4) 評価結果が確定する前の大学からの意見申立ての機会:参議院附帯決議第7項後段は、「評価結果が確定する前の大学からの意見申立の機会の付与について法令上明記し、評価の信頼性の向上に努めること」としている。政令案は、「評価結果を総務省の政策評価・独立行政法人評価委員会に通知する前に、当該評価結果について国立大学法人及び大学利用機関法人に意見の申立の機会を付与すること」としているが、「評価結果の確定プロセスにおける国立大学法人からの意見申立ての機会」については文部科学省令に規定するとしている。

ことの重要性に鑑み、後者も政令に規定すべきであり、また当然ながら大学共同利用機関法人にも意見申立ての機会を付与すべきである。

 

(5) 大学評価・学位授与機構による教育研究状況についての評価:「独立行政法人大学評価・学位授与機構法」第16条第2項は、「評価委員会」から大学等の教育研究活動の状況について「評価の実施の要請があった場合には、遅滞なく、その評価を行い、その結果を評価委員会及び当該評価の対象となった国立大学又は大学共同利用機関に提供し、及び公表するものとする」としている。「国立大学法人法」第35条において読み替えて準用する独立行政法人通則法第34条第2項は、「当該結果(大学評価・学位授与機構による評価)を尊重する」としている。このように評価制度において、大学評価・学位授与機構による教育研究活動状況の評価は、枢要な位置を占めている。

したがって、その評価結果に対して、あるいは評価結果が確定するプロセスにおいて、国立大学法人又は大学共同利用機関法人が大学評価・学位授与機構に意見の申立てをする機会の付与についても法令上明記する措置を取るべきである。

(6) 評価結果と資源配分との関係について、参議院附帯決議第8項は、「国立大学法人法による評価制度及び評価結果と資源配分の関係については、同法第三条の趣旨を踏まえ慎重な運用に努めるとともに、継続的に見直しを行うこと」としている。

欧米諸国では、主務省による評価と資源配分の直結は、ほとんどその例がない。ましてや、評価の歴史が未成熟な我が国においては、その運用は極めて慎重にしなければならない。これを踏まえ、評価と合わせて、資源配分についてもその算定基準を公表するとともに、大学等の意見申し立ての機会を保障することを政令上明記すべきである。また、少なくとも標準運営費交付金等の基礎的・基盤的な経費は、評価に基づく資源配分の対象外とすることを規定すべきである。

(7) 公正性・透明性の確保について、参議院附帯決議第9項後段は、「評価委員会」の委員の氏名や経歴の外、会議の議事録を公表するとともに、会議を公開するなどにより公正性・透明性を確保すること」としている。ここにある委員には臨時委員、専門委員を、会議には委員会の他に分科会・部会を含むすべての会議を含むこととした上で、この趣旨に沿った規定を政令に盛り込むべきである。

8) 中期目標の決定・変更、中期計画の認可への関与:冒頭で述べたとおり、評価委員会は国立大学法人法によって評価制度に関する権限以外にも、広範な権限を賦与されている。

その第1は、中期目標・中期計画に関する権限であり、文部科学大臣は中期目標を定め、又はこれを変更しようとするとき、及び中期計画を認可しようとするとき、あらかじめ、評価委員会の意見を聴かなければならないと規定している(第30条第3項、第31条第3項)。参議院附帯決議第5項においては、「中期目標の実際上の作成主体が法人であることにかんがみ、……文部科学大臣が中期目標・中期計画の原案を変更した場合の理由及び国立大学法人評価委員会の意見の公表等を通じて、決定過程の透明性の確保を図る」ことと指摘している。これを踏まえ、法第30条第3項、第31条第3項の規定による評価委員会の意見は、これを公表することを政令に明記すべきである。

 

9)業務・財務関係の許・認可等への関与:評価委員会のその他の広範な権限の第2は、法人の業務・財務に関わる許・認可等に関与する権限である。

   国立大学法人法は、国立大学法人・大学共同利用機関法人の業務の一つとして「技術に関する成果の活用を促進する事業であって政令に定めるものを実施する者」への出資(第22条第1項第6号及び第29条第1項第5号)を規定し、これには文部科学大臣の許可を要すると定めている(第22条第2項及び第29条第2項)。また、国立大学法人等は、文部科学大臣の承認を受けて積立金の処分ができること(第32条第1項)、大臣の許可を受けて長期借入金及び債券の発行(第33条第1項,第2項)ができると規定している。さらに長期借入金及び債券の発行をする国立大学法人等は、毎事業年度、その償還計画を立てて文部科学大臣の認可を受けなければならないとしている(第34条第1項)。そして、文部科学大臣が以上の項目の規定による許可又は承認をしようとするときは、いずれも、あらかじめ、評価委員会の意見を聞かなければならないと規定している(第22条第3項、第29条第3項、第33条第3項及び第34条第2項)。

   国立大学法人法第3条の規定に鑑み、これらの規定による評価委員会の意見も、これを公表することを政令に規定すべきである。

 

3、「評価委員会」に関する事項は、国立大学法人法案等関係6法案の国会審議でも重要な焦点とされたものであり、その設置に際しては、大学・高等教育関係団体の重要な位置を占める全国大学高専教職員組合と十分協議を行うことを求めるものである。