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<情報公開制度2年半>開示期限破りが横行 特定省庁に集中


毎日新聞ニュース速報

 国の情報公開制度が01年4月に始まって約2年半がたち、「開示期限破り」
 と「不開示の多さ」に対する批判の声が高まっている。総務省が各省庁などを
 対象に2年間の公開状況を調べた結果でも、(1)開示期限を延長しながら、
 その期限を過ぎても開示しなかったケースは1873件(2)開示すべき文書
 を不開示とした例は303件――と分かった。同省の指導にもかかわらず、
 「期限破り」は外務省や防衛庁など特定の省庁に集中している。この調査デー
 タを基に、各省庁の“後ろ向きの姿勢”を検証した。
【大治朋子】

 ◆請求から2年も

 情報公開をめぐっては、省庁が法定の期限内に開示しないケースが国会などで
 批判され、8月30日から2日間、仙台市で開かれた全国市民オンブズマン大
 会でも「事実上の不開示だ」などの指摘が相次いだ。情報公開法を所管する総
 務省は、今回の調査で初めて期限超過の実態把握を試みた。

 開示請求された文書が著しく大量な場合には、特例で開示期限を60日間に延
 長できるが、8月1日に公表された調査結果によると、延長期間内に何も開示
 しなかったケースは外務省の1044件を最高に7省庁で計1174件にのぼ
 った。
 また、この特例では、省庁は文書の最終開示期限を決定できる。その最終期限
 すら守らなかったのは外務、金融、防衛、宮内の4省庁で574件あった。こ
 のうち約4割にあたる241件は、最終期限を3カ月以上も超過。超過の最長
 は外務省の370日で、次いで防衛庁の304日。この中には、そもそも自ら
 最終期限を1年後に延長していたケースがあり、請求から実際の開示まで合計
 2年もかかっていた。金融庁では60日以内に文書の一部を開示しながら、最
 終期限までに残りの文書を開示しなかったケースが401件あった。

 また、請求が重なるなどして「事務処理上困難な場合」に認められた開示の延
 長(60日以内)をしながら、期限内に開示しなかったのは外務、防衛など5
 省庁で計125件。大半は1カ月以上、最長で1年近くも延長期限を超過して
 いた。
 「期限破り」が突出した外務省はその理由について、「請求文書が著しく大量
 で、開示・不開示の決定等に予想外の時間を要した」「他の事務が繁忙を極め
 た」――などと調査に回答している。

◆不開示4割は逆転◆

 情報公開法では、省庁の不開示決定に対する不服申し立てが認められており、
 審査会で検討・答申する。02年度の答申546件のうち、不開示決定を「妥
 当でない」と判断したのは40件(7.3%)あり、「一部妥当でない」が1
 92件(35.2%)で、両者の占める割合は42.5%。01年度は両者で
 71件、39.9%で、件数も比率も増えている。行政機関はいずれも不開示
 決定を取り消し、「逆転」開示している。

 一方、不服申し立てから審査会への諮問までの期間は、法令で期限の定めがな
 いため、行政機関が長期間諮問せず、不服申し立て人などから批判が相次いで
 いた。総務省は今回、この点も初めて調査した。

 その結果、01年4月から今年3月までの2年間の不服申し立ては計2109
 件で、うち諮問済みは1450件。全体の約3分の1にあたる残り659件は、
 未諮問のまま取り残されていた。未諮問のうち不服申し立てから1年以上たっ
 ているものが295件と、44.8%もあった。諮問済みでも、諮問まで半年
 以上たっていたのが469件あり、32.3%に達した。

 同省の情報公開推進室は調査報告の中で、「不服審査制度は簡易迅速な手続き
 により国民の権利利益の救済を図ることを目的とし、省庁はできる限り速やか
 に諮問するのが望ましい」と記載し、長期化の傾向に苦言を呈している。

 ◆法人の問題点◆

 02年10月、独立行政法人などについても情報公開制度がスタートした。対
 象は、国立博物館などの独立行政法人▽日本道路公団などの特殊法人▽日本銀
 行などの認可法人の計144法人だ。

 総務省によると、今年3月までの開示・不開示の決定総数は4600件で、う
 ち全部開示されたのは2割強の1043件に過ぎず、部分開示と全部不開示が
 合計3557件と全体の77%を占めた。行政機関における部分開示と全部不
 開示の割合36%に比べ、不開示率の高さが際立っている。

 開示決定の延長措置は、特例による60日間の延長は全開示決定中6%(行政
 機関4%)などと、開示までの長期化も省庁同様に懸念されている。

 NPO「情報公開クリアリングハウス」の三木由希子室長の話 外務省や防衛
 庁は大量の請求が寄せられ、予想以上に判断に時間がかかったと調査に回答し
 ているようだが、期限破りは法の規定に反する行為だ。外交防衛に関する情報
 は判断が難しいかもしれないが、ルールは順守すべきだ。期限破りが常態化す
 るほど放置したのは、必要な措置を講じなかったからで、業務における優先順
 位が低く、情報公開に消極的だと思われても仕方がない。

 来年以降に施行される行政機関対象の個人情報保護法にも、行政機関の持つ個
 人情報リストを開示請求したり、訂正請求する権利が認められている。しかし、
 同様の不当な延長が行われる懸念がある。同リストにはプライベート情報が掲
 載されており、延長によって訂正が遅れるなどした場合、個人の権利が侵害さ
 れる恐れもある。



[2003-09-05-00:14]