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『東京新聞』社説 2003年8月18日付 国立大法人化 学長は所信の表明を 国立大学の法人化へ向けて、現職学長が所信を表明する動きが出てきた。任 期が、法人へ移行する来年四月をまたぐ場合、それを境に学長の権限は一変す る。決意はぜひとも聞きたいところだ。 東京大学の佐々木毅学長は、先月の評議会で「私は法人化を前提として学長 に選出されたわけではない」と断り、法人化へ向けての所信を表明した。 その中で、同学長は「法人化は現在の状態を前提にして論ずる、という発想 では到底、対応できない」と強調した上で「大学全体を見通す管理能力を備え た中枢機能そのものを創出することが必要だ。そのための人員と財源は、断固 として動員する覚悟を決めている」などと、強力なリーダーシップを訴えた。 この所信表明は、東大のホームページにも掲載されており、学内外を問わず 誰でも読むことができる。 国立大学協会会長でもある同学長が、法人化へ向けての所信を表明したこと で、この動きは他の国立大の学長にも広がっていきそうだ。 法人化後の国立大は▽中期目標や予算、決算などを扱う役員会▽経営に関す る重要事項などを審議する経営協議会▽教育や研究に関する重要事項などを審 議する教育研究評議会−の各組織によって運営される。 いずれの組織も学長がトップを務めることになっており、その権限は従来と は比べものにならないほど強大となる。人事権を一つ例にとっても、形式的な 人事権が文部科学相にある学長と役員会の監事を除けば、すべてが学長に集中 する。 従来は教授会や評議会の権限が強く、学長といえどもそれらの決定を尊重せ ざるを得なかった。いわばボトムアップ方式だったが、法人化後は学長のトッ プダウンに変わる。 現職学長の任期が来年の四月をまたぐ場合は、学長の仕事内容も当然、それ を境に一変する。法人化に伴い学長として大学をどうしたいのか、ここはぜひ とも、それぞれの所信を表明してもらいたい。 その際大切なことは、学外者にも分かるよう、文書やインターネットのホー ムページなどで公表することだ。受験生にとっては大学を選ぶ参考にもなろう。 企業にとっては産学連携の相手を探す材料にもなる。 国立大学の法人化は、一八八六年の帝国大学令公布や一九四九年の新制国立 大学発足以来の大きな改革だ。この大改革を実効あるものとするためには、本 来あるべき大学自治の確立に向けた学長自らの決意と行動力が求められる。 |