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新首都圏ネットワーク

北大学長への公開質問状

「独立行政法人化問題を考える北海道大学ネットワーク世話人会」では、国立大学法
人法の成立という新たな状況の下で、以下の公開質問状を中村睦男北海道大学学長に
提出しましたのでお知らせします。       北大ネット世話人

以下、公開質問状
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                    2003年8月21日
北海道大学学長
 中村睦男 殿
               独立行政法人化問題を考える
               北海道大学ネットワーク世話人会

              公開質問状

新しい情勢に当たり、国立大学法人法に対する基本的態度及び北大の当面の運営に
ついておたずねします

2003年7月9日に国立大学法人法が成立した直後、学長は北大のホームページ
に「国立大学法人法の成立にあたって」(2003年7月18日づけ、以下、学長声
明と称する)を公表し、国立大学協会や文部科学大臣の見解を紹介しつつ学長の意図
を述べられました。しかし、学長声明は、国会審議において国立大学法人法案の種々
の欠陥が明らかになったことについて触れていません。

審議初日の4月3日に、衆議院本会議代表質問で、民主党と会派を組んでいる無所
属の山口壮議員は「国家百年の計を誤りかねない悪法である」と批判しましたが、成
立するまでの3ヶ月間に、衆参両院の委員会において、法案の諸々の欠陥が明らかに
され、文科省側の答弁は混乱し、何度も発言の撤回と陳謝が繰り返されました。
その
中で、与党側は、審議を打ち切り事実上の強行採決により無修正で成立させたのが、
私たちの今後のありかたを規定する国立大学法人法です。

この法律に基づく法人化の準備は、余程の慎重さをもって進めないかぎり、審議で
明らかにされた多くの問題点が直ちに大学本来の諸機能を損ない始めるでしょう。そ
れゆえに、私たちは、無理なスケジュールの下で、法人化に向けた準備が突貫工事の
ように進められていくことを強く危惧しています。

そこで、北大での法人化準備が慎重かつ十分な透明性のもとに進められることを願っ
て、下記の質問をさせて頂くことに致しました。ご多用のところ恐縮ですが、21世
紀の大学の方向性を左右する重大な時節に当たり、誠意をもってお答え下さいますよ
う、お願い申し上げます。

回答は2003年9月5日までに書面(E-mail回答を含む)にていただきたいと存じます。




質問1. 国会審議で一貫して最大の問題になったのは、文部科学省が中期目標を策
定し中期計画を認定するというシステムが大学の自治を損うのではないか、という点
でした。6月10日の参議院文教科学委員会審議では、2002年12月に文科省が各大学に
対して中期目標・中期計画の附属資料作成について詳細な指示をしていたことについ
て、遠山大臣と河本副大臣が事実と異なる答弁をしたことが問題となり、審議がストッ
プしました。半月あまり後の6月26日に遠山大臣が「謝罪」して委員会審議が再開さ
れましたが、謝罪の内容は、指示を出したわけではないが各大学が指示と誤解したこ
とは遺憾だ、という弁解でした。

誤解だったとは言え、自主性が大幅に制限された設定の中で作成された、2002
年度に北大が作成した中期目標・中期計画案とその附属資料をそのまま採用すること
は、文科省による大学のコントロールを甘受し、大学の自治を自ら放棄することを意
味するだけでなく、国会審議における国民を代表する方々の議論を無視することです
ので、一度白紙に戻して北大独自のものの作成に着手しなければならないと思います
が、学長のお考えはいかがですか。


質問2.学長の権限が非常に強くなる国立大学法人法と符節を合わせるかのように学
長は最近、学内における学長のリーダーシップをたびたび強調し本学におけるトッ
プダウンの運営体制を標榜されています。他方、2001年初頭に実施された学長選挙に
際して当北大ネットワークが各候補者に行った質問に対し、学長は、「大学のあるべ
き未来像」に関しては「大学の全構成員の総意をくみ上げることのできる、機能的で
かつ透明な管理運営体制を築いて行かなければなりません」、「合意形成システム」
については「大学の存在基盤が研究者の自由に基づく部局自治の原則にあることを忘
れてはならないと考えます。」と、文書回答を寄せておられます。加えて、学長は、
国立大学の法人化問題にふれて、2001年1月17日に北大を語る会の主催による事実上
の学長選挙立ち会い演説会において、たとえ大学の設置形態がどうなろうとも大学の
自治は守る、と明言されました。また、2002年4月9日に行われた北大教職員組合代
表との懇談の記録が同教職員組合によって公開されていますが、その中で、国立大学
が法人に移行するに当たり教育公務員特例法の対象からはずれるが、憲法がある限り
学問の自由は守れる旨、回答されています。

国立大学法人法の下で教育公務員特例法が適用されなくなることにより、「大学の
自治」に意義を与えている「構成員の自律的活動」が大幅に損なわれることが予想さ
れますが、学長は、トップダウン体制下で「構成員の自律的活動」を守り強化するた
めに憲法はどのような効力を持つとお考えでしょうか。また、その効力はどのような
具体的方法によって現実化される、とお考えでしょうか。



質問3.学長は、大学運営における透明性やアカウンタビリティーの重要性を度々強
調しておられます。北大ネットワークとしても、大学を発展させていくためには運営
の透明性は何ものにも増して重要だと考えています。 つきましては、今後の法人化
準備の過程で(1)2004年4月までの各準備項目ごとのタイムスケジュール、(2)就業規
則案、(3)教職員の過半数代表者の選出方法に関する案、(4)法人大学の運営に関わる
組織図・組織案、(5)役員人事案(中央官庁や産業界から役員を迎える場合には、天
下りや産学癒着を避けるための選定基準案)などを出来るだけ早期に全学に公表し、
かつ事態が進展するたびに、全学に伝え、全学的な吟味を受けるようにすべきと思い
ますが、学長のお考えはいかがでしょうか。


質問4.2003年5月14日の衆議院文部科学委員会で厚生労働省の担当官は、法人の大
学に対して労働安全衛生法等の適用を免除することがあるかという平野博文議員(民
主)の質問に、「労働安全衛生法が適用になれば、免除ということは、何らかの法定
事項がない限りはそういうことはない」と答えています。

この答弁のとおり、2004年4月1日から労働基準法、労働安全衛生法等が厳格
に適用されますが、果たして北大はそれらの法律が定める諸条件を2003年度内に
完全にクリアーすることができるのでしょうか。明確にお答え願います。
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服部 昭仁(Dr. Akihito Hattori )
北海道大学大学院農学研究科
生物資源生産学専攻
畜産資源開発学講座 
畜産食品開発学研究室