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新首都圏ネットワーク

法科大学院の教員候補、適否審査で「×印」続出


朝日新聞ニュース速報

 来年4月に迫った法科大学院の一斉開校に黄信号が点灯し始めた。開設を申請
 した72校の教員候補者について、新しい法曹養成者にふさわしいかどうかの
 審査結果が各校に通知されたところ、×印や△印のついた候補者が続出してい
 るためだ。このままだと必要な教員数の基準を割り込む大学院は20近くに上
 りそうで、教員探しに追われている。

 審査しているのは、文部科学省の大学設置・学校法人審議会の「法科大学院専
 門委員会」。伊藤真東大教授(民事訴訟法)ら各科目の研究者と、裁判官、検
 察官、弁護士ら計20人で構成される。

 法科大学院には、専任教員が「学生15人に1人」の割合で必要。そのうえ
 「1校に最低12人」の教員をそろえなければならない。

 専門委は、大学教授ら研究者教員については「最近5年の業績」、弁護士ら実
 務家教員については「最近5〜10年の実務経験」などを中心に、教える科目
 に合っているかどうかチェックした。

 「不適格」とされた候補者のいる大学院には補正を命じ、そこまではいかない
 が疑問が残る候補者は「保留」と判定した。

 その結果、都市圏の有名大学も含めて「不適格」や「保留」が続出。開設責任
 者の教授や、わざわざ提携した予備校の講師まで「不適格」とされた大学院も
 ある。最近業績のない80歳近い大家の法学者は「保留」。刑事法の教員候補
 の弁護士は、刑事弁護の実績欄に具体的な記入がなく「不適格」となった。

 こうした「×」や「×に近い△」が多いと、「15人に1人」をはじめ「実務
 家教員は全体の約2割」といった基準を満たせなくなる。定員割れを何とか防
 ぎたい大学院の間では、04年に開校しない大学法学部の教員などを対象に、
 リクルート合戦も始まりつつある。

 補正を命じられた大学院関係者は「設置認可数を絞りたいという圧力ではない
 か」「実務家教員にも業績として論文の数を要求されるのでは、これまでの大
 学と同じだ」と不満を漏らす。

 従来、設置審の役割は事後承認に近かった。しかし今回は粗製乱造にならない
 よう「実質的な審査」が期待されていた。9月には、カリキュラムのあり方や
 教員のバランスなどについての「総合意見」が各校に伝えられる。ここでも補
 正を命じられる大学院が出る可能性がある。
[2003-08-21-15:58]