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大学薬学部6年制へ、臨床教育充実 文科・厚労両省方針


朝日新聞ニュース速報

 文部科学省と厚生労働省は、質の高い薬剤師を養成するため、大学の薬学教育
 を現行の4年から6年に延長する方針を固めた。抗がん剤をはじめ新たな薬の
 開発が進み、より幅広い知識が必要になっている上、薬にからむ医療事故の防
 止など、医療現場で薬剤師に求められる役割が重みを増している。これに応え
 られるよう臨床教育を充実させるには4年では不十分と判断した。

 両省それぞれの検討会が月内にもまとめる報告書を受け、文科省は学校教育法、
 厚労省は薬剤師法の改正作業を進め、法案を来年の通常国会に提出する。成立
 してから施行まで2、3年の周知期間をおき、新入生から適用する方針。

 大学薬学部と薬科大は国公私立合わせて48ある。多くは薬剤師国家試験の受
 験資格が得られる6年制に移行する見込み。一部に4年制の学部を卒業して大
 学院に進学するコースも「研究者養成コース」として存続させる。学部4年、
 修士2年計6年の教育を受けた学生に受験資格を与えるかどうかは引き続き検
 討する。
 文科省では「薬学教育の改善・充実に関する調査研究協力者会議」が昨秋から
 検討してきた。

 報告書では「薬学の基礎的な能力に加え、臨床薬学を学ばせるためトータル6
 年間の教育が必要だ」と提言。夜間大学院や公開講座、通信講座などを通じて、
 大学が薬剤師の生涯学習を支援することなども求める。

 厚労省の「薬剤師問題検討会」は、「医療人として一貫した内容の6年間の教
 育期間が必要」と報告書に明記する。いまは病院などでの実務実習は必須では
 なく、多いところでも4週間程度だが、これを必須にし、期間を最低6カ月程
 度とすることなども盛り込む。

 薬学教育の教育期間については94年に厚生省(当時)の検討会が6年制を提
 唱した。

 しかし96年、文部省(同)の協力者会議は、教員の増員や施設整備に多額の
 投資が要る▽薬学部を志望する受験生への影響を見極める必要がある▽研究面
 の優秀な人材確保が困難になる――などを理由に、「現時点での年限延長は困
 難」とし、文部、厚生両省が対立する形となった。

 その後、両省と日本薬剤師会、日本病院薬剤師会に、大学薬学部や薬科大の代
 表者が加わった懇談会で協議した。今回の両省の検討会はこの協議を受けて議
 論した。

 現在、薬学部と薬科大の入学定員は計8400人。卒業生の40%強が薬局や
 病院の薬剤師に、約25%が大学院修士課程に進学、約10%が製薬企業など
 に就職している。

 日本では4年制の薬学部を卒業すれば薬剤師国家試験の受験資格が得られるが、
 米国では2年の基礎教育に3年か4年の薬学教育が必要。英国やドイツは4年
 の学部教育に1年間の卒後研修が必要としている。

[2003-08-02-06:11]