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「窓」―文科省の未来

朝日新聞ニュース速報

 東京・霞が関の中央官庁で職員数最多の文部科学省が、来年4月に下から2番
 目のミニ官庁になる。国立大学が法人化で切り離されるためだ。

 約13万人の大会社が持つ100近い工場が独立採算制の別会社になる。別会
 社への資金援助は続けるが、会社の規模はわずか約2200人。それが文科省
 の姿になる。

 どんな組織でも、小さくなれば仕事の内容は変わらざるをえない。だが、文科
 省は役所そのものの性格を変えるつもりはないようだ。

 このところ続く文科省の失態を見ていると、問題意識に欠けるとしか思えない。
 学力問題でゆとり学習が批判を受けると、進んだ学習をしてもいいとあっさり
 方針転換した。国立大学の法人化も、行革の圧力に抵抗できずに外部がつくっ
 た流れに乗るしかなかった。外の動きに鈍感で、実態を知らない。有効な対策
 も立てられない。結果は現場の混乱だ。

 そうしないためには、内向きの行政を根本から変えて、現場への統制をやめる
 ことが必要だ。大学行政では、予算配分を通じた支配をなくす。地方との関係
 では、さまざまな報告書や答申、通知などで現場をしばるという旧来の指導行
 政をやめる。現場の要望を聴いて政策を立てる役所に脱皮するしかない。

 戦前、文部省廃止を唱えた政治家で元鐘紡社長の武藤山治は「画一主義の教育
 ほどみじめなものはない。依頼心、卑屈心、形式偏重、常識欠乏、みなその所
 産である」と述べた。いまも通用する。〈山上浩二郎〉

[2003-08-01-14:06]