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  新首都圏ネットワーク

『週刊新社会』(新社会党) コラム「道しるべ」 2003年7月22日付

 国立大学法人化が成立
  資本支配と国策奉仕が目的


 義務教育の段階から自由競争・自己責任を基調に進められてきた教育「改革」
が大学に及び、日本の教育体系の再編はいよいよ仕上げ段階に入りつつある。
国立大学法人化法成立(7月9日)がそれであり、大学自治・学問の自由は危
機に直面している。

 法人化によって国立大学の設置者は、国ではなく、大学法人となる。大学法
人は、借金も含めて財産を継承し、大学経営の自助努力を求められる。市場原
理が重視され、資金調達のため債券も発行することになる。

 文科省は、「個性豊かな大学づくり」と主張してきたが、実際には国立大学
に対する管理統制をいっそう強化するものだ。各大学の「中期目標」の決定権
は、文科省が握っている。文科省内に設置される「評価委員会」が各大学の業
績を評価し、実績に応じて予算「運営費交付金」を配分する仕組みになる。

 基礎研究など差別

 要するに、成果を求めながら公費の投入はケチり、大学に生き残り競争をさ
せる。目標設定と評価を通じて教育と研究活動に対する介入・干渉や企業(産
業)の利益にそった誘導が行われる。優先的に評価されるのは、産業界の期待
に応える即効性の高い研究・開発であり、時間のかかる基礎研究や文化系の研
究は差別されるだろう。

 今進められている新自由主義路線の下での大学「改革」は、グローバリゼー
ションの下での国際競争に対応するため、高校からの「飛び級入学」などエリー
トづくり、先端科学技術の研究開発に特化した産業提携大学の再編(「トップ
30大学構想」など)として進められてきた。

 そして戦後教育改革の理念である大学教育の大衆化(すべての都道府県に国
立大学、共通の教養教育の重視)を放棄し、国家財政による直接的補助を縮減
し、補助金の傾斜(差別)配分を強めながら全国的な統廃合を進めつつある。
その結果、国立大学のない県も生じるだろう。

 生殺与奪の権握る

 さらに法人化された大学の経営は、学外者を過半数含む経営協議会が実権を
握り、教授会はあっても、無力化する。最高意思決定機関は、学外理事を含む
少数の役員会であり、学長はトップとして教員の人事権など大きな権限を与え
られるが、大学経営の業績評価によって文科省が任免権をもっている。大学の
改廃を命じることもできる。

 こうして法人化大学は文科省に生殺与奪の権を握られ、同時に文科省を窓口
にして官僚の天下り先となるだろう。学生には、大学の「個性化」と「裁量」
の名による学費の高騰がのしかかるだろう。非公務員として数職員は、業績評
価による再任拒否をはじめとする教育・研究活動への介入、人権無視と雇用流
動化にさらされる。

 以上のように国立大学法人化は、「コーポレート・ガバナンス(企業統治)」
の立場に立った資本の大学支配、国策奉仕の大学づくりを主眼とする改悪であ
り、数多い教育関連法のなかでも最悪のものである。

 学問の自由、大学の自治を窒息させるこの悪法を認めることはできない。廃
止をめざして運動を再構築しなければならない。