独行法反対首都圏ネットワーク |
私たち群馬大学教職員組合では「声明:「国立大学法人法案」等の成立に、強く抗議 する」と「今、学長選考規程を変える必要はあるのか?」と題する文章を声明を学内 に発表しましたので、全国のみなさまの参考になればと、転送します。 ご存じの通り、7月9日に、「国立大学法人法案」等の関係6法案が、参議院本会 議で可決され成立しました。私たち群馬大学教職員組合では、法案の問題点を指摘 し、全国の数多くの大学人とともに法人化に反対してきました。最近では、国会の審 議を通じて法案の問題点がますます明確になり、マスメディア等でも法案に対する批 判の声が多く聞かれるようになってきていました。法案が国立大学を文部科学省に従 属させようとしていること、日本の教育・科学の将来を大きく損なうものであること が、広く認識されるようになってきていたのです。そんな中で、それを無視するかの ように法案が採決に付され可決・成立したことには、大きな失望と強い怒りを感じざ るを得ません。私たち群馬大学教職員組合は、ここに抗議の声明を発表します。是非 とも、ご一読ください。 群馬大学教職員組合 ------------------------------------------------------------ 声明:「国立大学法人法案」等関係6法案の成立に強く抗議する 2003年7月15日 群馬大学教職員組合中央執行委員会 7月9日、「国立大学法人法案」「独立行政法人国立高等専門学校機構法案」等関 係6法案は、参議院本会議で可決され成立した。 この間、衆議院で5回、参議院で7回の委員会審議が行われ、法案に数多くの重大 な問題のあることが明らかになった。にもかかわらず政府は、批判にまともにこたえ ず、「来年4月に法人化」という政府の日程のみを優先し、与党の数の力で審議不十 分のまま法案を成立させたものである。私たちは、小泉内閣と与党に対し、強い怒り と抗議を表明する。 この「国立大学法人法」には、次のような問題がある。 (1)「法人化し、自律的な環境のもとで国立大学をより活性化する」との謳い文句 とは裏腹に、文部科学大臣が大学の中期目標を定め、中期計画を認可し、大臣の変更 命令に従わなければ罰金を科せられる。さらに、6年後に教育研究の門外漢である総 務省の勧告をうけて、文部科学大臣が「廃止や民営化」を含む措置をとるのである。 (2)国立大学の第一次的な財政責任を負うのは「国」から「法人」に移ることにな り、学費など国民負担が増える危惧がある。さらに財務・会計制度に関する具体的な 事項は、これから定められる政令・省令に委ねられ、この期に至っても運営費交付金 の配分基準すら示されていない。群馬大学の場合で340億円にも膨れ上がってし まった大学法人の債務をどう解消するかは不明確であり、大学における教育・研究・ 医療の水準を維持改善するに足る公費が確保される保障はどこにもない。 (3)教員が公務員でなくされることにより教育公務員特例法が適用されなくなり、 教員人事の自主性が脅かされるおそれがある。このことは大学自治を損ない、ひいて は学問の自由を掘り崩すことにつながる。そして、大学の教育・研究・医療が一部の 人のためのものに変質し、大学が社会に対して果たすべき責任を果たせなくなってし まいかねない。 (4)経営と教学を分離し、学外者が多数を占める経営協議会に大きな権限を与えな がら、教育研究評議会には予算や組織改廃の審議・決定権を認めていない。これは、 教育研究を目的とする大学の運営組織を、経営効率優先の組織に変質させるものであ る。 (5)「学長選考会議」は、経営協議会の学外委員及び教育研究評議会選出の委員、 各同数で構成され、委員総数の3分の1以内で学長・理事を加えることができるとし ている。これでは、大学運営の最高責任者の決定を、学外委員(文部科学官僚の天下 りも予想される)の意向が左右する危険がある。 (6)法人化によって労働安全衛生法等が適用されることとなる。だが、国立大学の 数多くの施設が同法の基準に反する状態であり、それにもかかわらず適法にするため の補正予算は予定されていない。したがって、来年4月には違法状態が頻出する。こ れまで、同法が適用されないのをいいことに安全衛生のための措置を怠ってきた文部 科学省の責任は、非常に重大である。 国会、とりわけ参議院における法案の審議を通じて、これらの問題点が明確となっ た。遠山敦子文部科学大臣をはじめ文科省官僚は、失言、暴言、無関係な答弁を繰り 返し、審議がたびたびストップした。また参議院において23項目もの附帯決議が採 択されたことは、同法がいかに欠陥に満ちているかを物語っている。なお、この付帯 決議は、上のような問題点が最悪の形で顕現することを阻み、学問の自由と大学自治 の擁護、教職員の身分保障と待遇改善を図る今後のとりくみをすすめる上で、権限濫 用等の歯止めとして活用しうるものであり、それを生かせるかどうかは全大学人の今 後の努力にかかっている。 法案が成立した今、大学・高等教育の充実をめざす私たちの前途には多大な困難が 待ち受けている。しかし、いかなる困難があろうとも、私たち群馬大学教職員組合 は、人類と地域社会に貢献する大学・高等教育の再構築に向けて、また、地域の方々 と群馬大学の構成員の絶大な支援のもとに、群馬大学の教育・研究・医療の後退を許 さずに充実させていくために、今後とも努力を重ねていく決意である。また、そのた めにも、群馬大学のすべての教職員の身分と権利を確保するための取り組みをいっそ う強めていく所存であることを、あわせて表明する。 ------------------------------------------------------ 今、学長選考規程を変える必要はあるのか? 赤岩学長の任期が12月で満了するのを控え、今秋、新学長が選ばれます。この新 学長選考を前にして、今、大学当局は、学長選考規程の改定を考えています。当局の 用意した改定案は学長選考に学外者を関与させるもので、7月17日の評議会で審議 される見込みです。 群馬大学教職員組合の中央執行委員会では、この改定問題をめぐって以下のような 見解を表明し評議員にお送りしましたので、広く教職員のみなさまにもお知らせしま す。 1 去る7月9日に国立大学法人法が成立しましたが、来年4月1日より前に任期が 始まる学長の選考は、同法ではなく、教育公務員特例法の下に行われます。したがっ て、群馬大学学長選考規程を変更する必要はありません。「新法附則第2条第3項に 準じた選考が望まれている」というのであれば、誰がどのような理由で望んでいるの かを明確にした上で、その「望み」の妥当性を検討すべきです。 2 現行法の下では、教育公務員特例法を見ても国立学校設置法を見ても「運営諮問 会議のメンバーを加えた選考会議の意見具申の必要」など存在しません。したがっ て、教育公務員特例法が求めていない「学長適任者選考会議」をあえて設置し、そこ に運営諮問会議から選出された委員を加えることには、二重の問題があります。 3 学長選考規程をそのように変更する必要性について、学長は評議会で「文部科学 省との接触でイロを付ける必要を感じた」と説明したと伝えられていますが、これが 本当だとすれば、学長のこうした姿勢は、大学運営における毅然とした自主的な姿勢 を放棄し、文部科学省の誘導に譲歩したことを意味するものといわざるを得ません。 さらに、こうした姿勢は従来から大学運営の様々な機会に現れ今日の大学の諸困難を もたらしたものであり、今後も継続されるならば一層の困難をもたらすものでもあり ます。 4 今回の学長選考に際してそのような選考方法をとるべき積極的な理由は、なんら 示されていないのではないでしょうか。学長選考方法を変えるのであれば、今までの 学長選考方法にどのような問題があったのか、不適任者が選ばれたといったような何 らかの弊害が生じていたのかどうか、明らかにするべきです。 5 以上に述べた理由により、今回の学長選考にあたっては、自主的な大学運営とい う基本に立ち戻り、学長選考規程を変えることなく実施すべきである、と私たちは考 えています。評議会におかれましては、現行規程に基づいて学長選考を実施すること を確認されるよう、強く希望いたします。 |