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独行法反対首都圏ネットワーク


『四国新聞』一日一言  2003年7月16日付


 国立大法人化法が成立した。学長の権限を強めてリーダーシップを発揮させ、
大学同士の競争を促進するものだが、共同通信の学長アンケートからは期待よ
り不安の強さが透けて見える。

 来年四月からの実施まで、残り時間が少ない中で大学は準備に追われている。
法人化によって大学への交付金は文部科学省の評価委員会が決めるが、学長の
四人に三人は「評価がきちんと行われるか不安」と答えている。

 大学の中期目標を文科相が認可することで「文科省の介入が強まる」と危ぐ
する学長が四人に一人いる。法人化に向け、リーダーシップを取らなければな
らない学長に改革への懸念を抱かせるようでは先が思いやられる。

 本当に大学同士の競争を望むなら、国があれこれ口をはさむことは慎むべき
だろう。もう一つ気になるのは授業料だ。文科省が標準額を示して、一定範囲
で大学が決めるとされているが、まだ中身は明らかになっていない。

 アンケートでは「上げる方向」と答えたのは一校だけ。「まだ検討していな
い」が72%、「現行通り」が25%で、ほとんどが模様ながめの状態だ。こ
れまでの大学にとって授業料とは国が決めるもので、人任せで「上がる」もの
だった。

 それが来春からは大学自らの責任で「上げる」ことになる。値上げするには
「授業をこう改善し、成果を出す」という説明が必要になるが、そんなことは
大学の先生はあまり経験したことがないだろう。教員の給与水準が妥当かどう
かも問われる。

 大企業が群居する大都市はいざ知らず、経済基盤の弱い地方大学の経営は容
易ではない。地域ぐるみの取り組みが不可欠になるだろう。