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独行法反対首都圏ネットワーク

 asahicom 03/07/15

「国立大経営手伝います」 法人化で金融機関が売り込み

来年4月の国立大学法人化をビジネスチャンスととらえ、金融機関などが大学経営を支援する業務を売り込む動きが広がっている。各大学に配分される予算の使い道が大幅に緩和されるため、資金運用の需要が生まれると見込む。「東大なら、年間資金約2000億円、京大は1200億円と大企業並み」との見方もある。しかし、売り込んだサービスを大学側が使いこなせるかどうか。これまで「護送船団」方式でやってきた国立大の「経営力」を疑問視する声もある。

 みずほ銀行は昨年春、国立大に近い支店すべてに担当を置いた。本店の担当者も文部科学省に通う。法人化後の資金運用や資産管理のニーズの掘り起こしが狙いだ。私立大と取引が多いという東京三菱銀行も、営業チームが全国行脚を続ける。

 事務の効率化を図るため、給与計算、学費滞納者への取り立てなどを銀行が担うことができる。授業料や受験料を、コンビニエンスストアやインターネットで振り込むことも可能になる。収入確保のためにも、知的財産の管理、企業との連携、授業料の設定など、銀行のノウハウを活用できる。

 「高度な頭脳が集まった大学の潜在力は大きい。あらゆるビジネスチャンスを生かせるよう、銀行なら手助けできる」とみずほ銀行の担当者は意気込む。行員を経理担当として大学に派遣することにも応じるという。

 ある損害保険会社の営業チームは昨年から、全国の国立大を回り、保険を売り込んでいる。

 これまで事故や火災で建物が壊れたり人がけがしたりしたとき、その修繕費や補償は国が対応してきた。法人化後は、各大学がそれぞれの予算内で責任を負うことになりそうなため、損害保険に入った方が有利な場合も考えられるからだ。

 火災保険や自動車の任意保険だけではない。入試の出題・判定ミス、付属病院での医療ミスによる被害者への補償のほか、教職員のセクハラによる損害賠償に対応する保険まで用意している。

 大学側に一般競争入札で保険料の安さだけで決められては、営業努力も無駄になる。保険の中身まで考慮して決める「総合評価方式」による入札を選ぶよう、営業マンたちは大学を説得する。

 ある担当者は「民間企業並みの経営判断が求められるが、国立大はそれに慣れていない。保険の利点をなかなか理解してもらえない」と苦労を語る。

 法人化後、国立大は企業会計を導入する。大学の経理担当者は貸借対照表などを作成する複式簿記を学ぶため、2年ほど前から大手会計監査法人に講義を依頼してきた。ある国立大では、先月から学部長ら幹部向けの講習会も開き、経営マインドの養成を求めた。

 監査法人にとっては、会計監査人に選んでもらうための下地づくりでもある。監査料は「東大ならば年間数億円」と見られているからだ。

 大学経営をめぐる環境は厳しい。国から受ける予算(運営費交付金)は今後減らされる可能性がある。43校では付属病院整備のための借金が計1兆2000億円ある。18歳人口は減少中で、学生からの授業料収入も確保しにくくなる。民間サービスを活用し、経営改善することが求められるが、ある大手監査法人の国立大担当者は懐疑的だ。

 「法人化で確実に収入を得るのは、監査法人と会計のコンピューターシステムを構築する業者だろう。これまでの役所の論理が続くようだと、他の業界のノウハウは生かされない。大学の経営力が問われる」と言っている。

    ◇

<国立大学の法人化>

 文部科学省の内部組織だった国立大を来年度から法人として独立させることが今国会で決まった。学長の責任と権限を強めて運営に民間経営の手法を導入したり、教育研究などに対する第三者評価の結果を予算の配分に反映させたりすることで、国立大を活性化するのが狙い。各大学は国から渡しきりの運営費交付金を受け、自由に使い道を決める。債券発行や長期借入金も認められる。 (07/15 10:24)