トップへ戻る   以前の記事は、こちらの更新記事履歴
独行法反対首都圏ネットワーク
法反対首都圏ネットワーク 
 
『日本経済新聞』社説  2003年7月13日付

 国私大間の競争格差是正を


 国立大学の法人化へ向けた6つの関連法が国会で可決、成立した。一律的な
国の予算配分の下で競争原理の働かなかった国立大学が、それぞれの法人が掲
げる中期計画の達成度を第三者機関が評価して運営交付金に反映させるなど、
新しい仕組みの下で来春から生まれ変わる。

 これらの新法では、学長権限を強化した上で、学外からのスタッフを含めた
協議会による自律的な経営の仕組みを導入しているほか、産学連携へ向けて大
学の技術移転機関(TLO)への出資を認めている。

 大学債を発行して資金調達への道も開くなど、戦後護送船団体制で守られて
きた国立大学がそれぞれの自己責任に基づき自律・自主の原理で再生する道筋
が示されている。

 当初早期の法案の成立が見込まれていたにもかかわらず、大幅にずれ込んだ
のは、法人化後の国立大学の運営の根幹というべき中期計画の策定や第三者評
価の仕組みに文部科学省が深く関与する懸念が広がったからである。大学関係
者などから「改革という名目で実質的な文部科学省の支配が強化されるのでは」
という批判が高まり、野党を中心に法案の修正を求める意見が相次いだ。

 制度の運用で法人化後の大学がなお文科省の強い支配下に置かれるならば、
法人化は改革の精神と逆行する官僚のための再編にすぎない。

 これとあわせて重要なのは、法人化がひとり国立大学のみならず、私立大学
を含めた日本の大学全体に大きな影響をもたらすことである。

 法人化以降の国立大学は、基本的には運営資金のすべてをなお税金に仰ぎな
がら、規制から解かれて経営面での大幅な自由を手にする。

 国からの研究資金の額では私立大学の5倍、学生1人あたりの国費の投入額で
は私学の17倍ともいわれる国立大学の現状を考えると、法人化後の大学全体の
競争の基盤は国立大学と私立大学との間の格差をますます広げることが予想さ
れる。

 学生数での7割以上を占める私立大学は人材の供給基盤として大きな役割を
担ってきたが、少子化の下で生き残りへ競争を強めている。国立大法人化に際
して、大学の設置形態を超えてアンバランスな競争の構造の是正を考える必要
がある。