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独行法反対首都圏ネットワーク


『徳島新聞』社説  2003年7月11日付

国立大学法人法成立

公正な運用が望まれる


 国立大を国の直轄から独立した法人にする国立大学法人法など関連六法案が、
与党三党の賛成多数で成立した。

 来年四月には県内の徳島大、鳴門教育大を含め、全国に八十九の国立大学法
人が誕生する。国家公務員だった約十二万三千人の教職員も非公務員となり、
国立大学はかつて経験しなかった競争時代に突入する。

 戦後の新制大学発足以来の大改革である。遠山敦子文部科学相は「自主、独
立、自己責任の大学運営」を掲げた同法を「素晴らしい中身」と自画自賛する
が、逆に大学関係者の「官僚支配が強まる」との懸念は払拭(ふっしょく)さ
れないままだ。

 大学の自治や学問の自由が侵されることのないよう、適正な運用を望みたい。

 大学側が最も疑問視してきたのは、大学の運営方針を定める六年間の「中期
目標」を文科相が決定する点である。

 「中期目標」に沿って大学側が経営や研究などの「中期計画」を作り、目標
達成度や研究業績を文科省に置く第三者機関「国立大学法人評価委員会」が評
価、国からの運営交付金配分に反映させる。

 そのため、ノーベル物理学賞を受賞した小柴昌俊東大名誉教授らは「中期目
標」について「大学の自主性を尊重し、届け出制にすべきだ」とする緊急アピー
ルを発表。徳島大学教職員組合なども「国からの大学運営交付金が減らされれ
ば授業料の値上げや(付属病院の)患者負担の増加、教職員人件費の削減が避
けられない」と法案に反対してきた。

 大都市と地方の大学格差がさらに拡大しかねないことを懸念する声も強く、
運営交付金の公正な配分が望まれる。

 また経営上、外部資金導入も検討しなければならなくなるため、産業界に受
けのいい研究がもてはやされ、基礎研究の衰退を心配する声もある。運営交付
金の配分に当たっては、地道な教育と基礎研究がきちんと行われているかどう
か、適正に評価すべきだ。

 どの大学、学部でも一律に年間約五十二万円だった授業料は、文科省が定め
る範囲内で各大学が決めることになる。先日、共同通信社が行った全国の国立
大学長アンケート調査では、学長の半数が授業料の上昇を予想しており、値上
げの可能性は十分にある。

 学生の学力低下が深刻化した昨今、文科省は、高等教育予算を現在の国内総
生産(GDP)の0・5%から先進諸国並みの1%にするくらいの検討をすべ
きだ。運営交付金が従来より減るようだと、行財政改革のための法人化と批判
を浴びても仕方がない。

 法人化後は大学の運営方針を決める学内組織として、学長、理事、監事らで
構成する「役員会」などが設置される。この監事を文科相が任命するようにな
ることも、官僚支配の強化が懸念される点だ。文科省からの天下り人事などは、
厳に慎むべきである。

 少子化が進む中、法人化によって大学間の競争が激しくなるのは確実だ。う
かうかしていると、地方の大学は取り残されてしまう危険性が十分にある。

 さまざまな問題があることも確かだが、法人化を大学改革のチャンスととら
える視点も大事だ。徳島大、鳴門教育大とも、生き生きと個性あふれる大学に
なるよう、懸命に取り組んでほしい。

 優れた人材の育成も、徳島県の活性化も、すべてはそこにかかっている。