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独行法反対首都圏ネットワーク


               審議は尽くされていない

                                                                    2003年7月8日
                                                      独立行政法人反対首都圏ネットワーク事務局


 審議は尽くされたのか? 8日採決の基本的条件は、法案に関する審議が尽くされたということであった。しかし、審議が不十分な点、ほとんど実質的な審議がなされていない点が数多くある。

(1)適切な答弁がない点


1.労働安全衛生法問題

 衆院からの持ち越し案件であるが、未だ正確な調査とその結果の公表および必要経費の手当の仕方についてはまったく不明なままである。

 これに関連して、準備が整わない場合は「実験をストップする」ということが文科省サイドで言われているという情報がある。これが確かであるとすれば、このまま法案が成立すれば、教育研究活動の重大な支障をもたらすことになる。

 また、衆院文部科学委員会における「今でも人事院規則に違反している」旨の遠山大臣発言は、取り消されたとはいえ、重大な法律軽視の発言で、取り消せば済むという問題ではない。

2.準備作業への予算措置

 会計システムの構築のための予算を措置し、現に入札も行われている事態は、国会軽視・国会無視の行政権の越権行為である。「閣議決定があるから」という遠山大臣の答弁は撤回されたが、文科省のそうした姿勢が、こうした越権行為を生んでいる。

 行政権限の範囲として準備作業を行うことができるというのが文科省の答弁であるが、会計システムの構築についての予算支出は、明らかに、国会における法案審議において関連通則法条文を認めるか否かという実質的な審議権を拘束するものと言わなければならない。逆に言えば、法案審議において「企業会計原則」の採用が不適とされれば、支出された予算は違法な支出となるのではないか。

3.中期目標の大臣による定め

 これについて、「国庫を投入するから最低限の関与が必要」というのが文科省側の答弁である。独立行政法人制度のスキームによる、というのであれば説明にはなるが、国庫を投入することによる最低限の関与が、中期目標の大臣による策定に直接結びつくわけではない。

 国立大学の「業務」が教育研究であることは自明であり、国立大学の教育研究に適正に支出されていることが確かめられるかぎり、国庫投入の「説明責任」は果たしうるはずである。

 他方、教育研究の具体的な内容や使途について規制が及ぶなら、教育研究の自由を犯し、教育基本法10条、憲法23条に違反する。

4.中期目標・中期計画は財務・経営事項だけではいけないのか

 こうした質問に対して、文科省は国庫投入論以外の説明をしていない。上と同じ理由で、文科省答弁は適切な答弁とはなっていない。

5.中期目標の準備作業

 文科大臣の「お詫び文」も不正確であり、中期目標の作業が文科省によって強制されたことは明らかである。重大な虚偽答弁を繰り返したことになる可能性が高い。

6.非公務員化の理由

 法案附則第4条に規定するからというのが、文科省の答弁であるが、附則4条の根拠が問われているのであって、これについての答弁は未だない。

7.「通則法のわずかな規定を準用しているにすぎない」(大臣答弁)

 この答弁は、明白な誤りであり、文科大臣の法案に関する認識がきわめて不十分であることを示している。提案者のこのような認識不足は、法案提案に重大な問題があることを示している。

8.授業料

 ほぼ現行水準の標準を設定するというのが、文科省の答弁であるが、財政審議会の建議などを見れば、財務省との調整がまだ整っていない可能性が高い。文科省の答弁がたんなる決意表明であるとすれば、十分な答弁とはいえない。

(2)十分な審議がなされていない事項

1.「大学の自由度」は高まるか?

 文科省は一貫して、国の行政組織であるゆえの諸種の規制(人事、財務、組織)があり、現行制度における大学の自由度は低いと説明している。しかし、これらの規制のうちにはすでに法改正によって緩和されたものが多く(兼業規制、学科の変更)、具体的にどのような「不自由」があるのか明らかにする必要がある。

 他方、中期目標・中期計画・評価を通じた教育研究の規制はこれまでにないものであり、国立大学の活動の根幹である教育研究の自由に関しては、「自由度」は低まると見なければならない。

 なお、文科大臣は、これを法人化の第1の理由と答弁しているので、この点は十分に精査されなければならない。

2.「法人化費用」はどう手当されるか?

 法人移行のための費用(労働安全衛生法対応、資産調査・登記、会計システム構築、監査法人費用等)および法人移行後の費用(役員報酬、雇用保険料、損害保険料、監査法人費用、など)は、現行システムでは必要とされない新たな追加的費用であり、これらの費用がどのように手当されるか明らかにされていない。

 これらの費用が運営費交付金で措置されるなら、国の財政支出は法人化によって増加することになり、運営費交付金が現行校費水準であれば大学の実質的な教育研究経費は削減されることになる。

3.明らかでない財務システム

 運営費交付金の算定基準は未だに明らかでない。昨年10月の文科省資料(未定稿)では、各種の係数はまったく不明なままである。これによって、法人化後の国立大学の教育研究のあり方も影響を受ける。

 また、「評価」の結果を運営費交付金の水準に反映するとされているが、その仕組みもまったく不明なままである。これでは、財務面からの国立大学の文科省への従属を強めるだろう。

4.大学の管理運営システム

 これについては、衆院で散発的な論議の対象となっているが、参院ではまだ本格的な審議の対象となっていない。

 学長選考会議が学内・学外同数で構成されること、現役員も加わりうること、理事の数が法定される理由、経営協議会が学外者半数以上とされる理由、経営協議会と教育研究評議会との権限関係とくに教育研究組織に関する審議権、などは十分に審議されていない。

5.国立大学法人評価委員会

 評価委員会の構成、評価の方法などいまだまったく不明である