独行法反対首都圏ネットワーク |
『日本経済新聞』夕刊 2003年7月9日付 国立大法人化「時間ない」 交付金や中期目標 空振り覚悟で準備 全国の国立大学の姿を大きく変える国立大学法人法が九日成立する。当初は 六月中旬成立が見込まれていたが、国会の会期延長も絡んで一カ月近くもずれ 込み、来年四月の法人化まであと八カ月余りに迫った中での発進となった。準 備作業に追われる大学側は「中期目標の原案づくりが間に合わない」「情報が 少なすぎる」と焦燥感を隠さない。 「ぎりぎりのスケジュール。学内も落ち着かない」と話すのは東大の佐々木 毅学長。六月中旬の法案成立をにらみ、運営費交付金の算定根拠となる中期目 標の原案づくりなど準備を進めてきたが、国会審議の中断で「あらゆる分野で 準備作業のための議論がストップした」という。 佐々木学長が最も気にかけるのが教職員の雇用問題だ。法人化で教職員の身 分は非公務員型となり、国立大学法人は教職員とは個別に雇用契約を結ぶこと になる。「法案成立前は話がしにくい状態」だったという。 ほかにも授業料や入試日程など細部を詰めなければならない項目は多数ある が、七月からは学会も盛んになり教授らの出張などが目白押し。「たとえ一カ 月の遅れでも昨年までとは訳が違う。本当に準備が間に合うかどうか」と危ぐ する。 大阪大の宮西正宜副学長は情報不足を嘆く。国会審議の中断で「中期目標の 書き方を文部科学省に問い合わせても、返答が来なくなった。急に方針転換さ れたら対応できない」と困惑する。 法律は法人化の骨格を示したにすぎない。細かな運用は法案成立後に示され る省令や政令、通達などに盛り込まれるため、大学側は具体的な準備作業に踏 み込めない面もあるという。宮西副学長は「学内には徒労感も漂っている」と 話す。 中期目標の達成状況を評価するため有識者らでつくる「国立大学法人評価委 員会」の発足は今年十月だが、委員の人選や具体的な評価基準も示されていな い。九州大は「情報を待っていては物理的に間に合わない。非効率かもしれな いが、評価の対象とならない可能性があるものも含め"空振り"覚悟で大学の特 色を中期目標に盛り込む」(事務局)という。 「運営費交付金の配分などについて大学側がどれだけ反映されるのか、だれ がどのような第三者評価をするのか、現段階で保証されているものは少ない」。 香川大の木村好次学長がこう指摘するように、地方の国立大学では法人化で激 化が予想される大学間競争への危機意識は高い。 各大学の声を集約、代弁する立場の国立大学協会は六月中旬に開いた総会で、 法人化については「法案成立後の臨時総会で見解を表明する」として議論を先 送りした。これには参加した学長の一部から、「なぜ議論しないのか」(滋賀 大)、「国大協としてメッセージを発しないのはおかしい」(宇都宮大)といっ た不満も噴出した。 |