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独行法反対首都圏ネットワーク


国立大学法人法案へのアレゼール日本の声明


日本の高等教育と学術研究の将来的な展望を切り開き、それを可能とするような本当
の意味での大学改革を実現するという観点からみて、現在国会で審議中の国立大学法人
法案は、それを実現するものではなく、逆に困難なものにするものであると私たちは
考えます。現在の国立大学法人法案については、さらなる審議が必要であり、よって
現法案を廃案にすることを要請します。


私たちアレゼール日本(高等教育と研究の現在を考える会)は、日本全国で進められて
いる一連の「大学改革」の動きが、どのような大学界を創造していくのかについて理念
も必然性も欠落させ、あまりに近視眼的で場当たり的なかたちで進められている現状に
疑問を抱き、先ほど、『大学界改造要綱』(藤原書店、2003年4月)を出版しました。

そのなかで私たちは、日本の高等教育と学問・研究の将来を見据え、その展望を切り開
いていくためには、国立・公立・私立といった大学の設置形態を超えて、99の国立大学、
75の公立大学、512の私立大学からなる日本の「大学界」の総体を視野に入れて、日本
の高等教育システムが現在抱えている問題について多元的に検討していく必要があるこ
とを明らかにしました。

現在、日本の大学界はさまざまな矛盾、問題を抱えているという現状認識を私たちは共
有しています。しかしそれらの矛盾、問題を乗り越えるための本当の意味での「大学改
革」を行うには、大学の教職員、学生そして市民という、大学にかかわり大学に関心を
もつあらゆる人々が、大学の現状についての認識を持ち、それをいかなる方向に変えて
いくかを討論する公的な場を作り出していくことが決定的に重要なことだと考えます。
そして、そのような場を作り出していくためにこそ、大学関係者は全力を注ぐべきだと
考えます。

文部科学省と与党が、2004年4月からの法人化を既成事実とし、今国会で強引に採決しよ
うとしている国立大学法人法案は、そのような方向と逆行するものであり、日本の高等
教育と学術研究の将来的な展望を切り開くための、高等教育システム総体の本当の意味
での変革を困難なものにするものです。
6月26日付の東京新聞でもあらためて明らかになったように、国立大学法人に移行した際
の大学間競争への「対応」として、文部科学省などの官僚出身者が多数、国立大学法人
の役員へと迎え入れられる見込みであることが分かっています。そのことは、大学界を
とりまくさまざまな矛盾、問題を、独立行政法人化を通した「競争」によって解決しよ
うという国立大学法人法案の方向性が、個別大学の「生き残り」をかけた「競争」へと
各大学を追いやることによって、大学界総体の将来を見据えた改革を実現することを、
徹底的に難しくすることを象徴的に物語っています。

日本の高等教育と学術研究の将来的な展望を切り開き、それを可能とするような本当の
意味での大学改革を実現するためにこそ、私たちは国立大学法人法案の廃案を、国会で
法案を審議中のすべての議員の皆さんに訴えます。

                                                            2003年6月30日

                        アレゼール日本(高等教育と研究の現在を考える会)

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