トップへ戻る   東職HPへ戻る
独行法反対首都圏ネットワーク

<国公立大学通信 2003.06.28(土) より引用掲載>http://ac-net.org/kd/03/628.html#[2]


 6/21 東京大学理学系研究科物理学専攻教官有志11名から文教科学委員へ ----------------------------------------------------------------------
参議院文教科学委員      先生

平成15年6月21日 国立大学法人化法案に関する要望書(1ページ) 東京大学 理学系研究科 物理学専攻 教官有志11名  文教科学委員の諸先生方には、わが国の教育と研究に 関する国政に多大なご尽力を賜り、深甚の感謝を表明い たします。とくに今国会では、いったん衆議院を通過し た国立大学法人法案に、参議院にて慎重なご審議を重ね て頂いておりますことは、「良識の府」としての参議院 の役割を如実に示すものとして、感銘を深くしておりま す。  私たちは、ノーベル物理学賞に輝いた小柴昌俊名誉教 授をはじめとする諸先輩の後を継ぎ、重責と自負をもっ て日本の高等教育と基礎科学研究に日夜、微力を尽くし ております。もとより私たちは、現在の国立大学が抱え る多くの問題を重々に認識しており、それに対して当物 理学教室は1993年、全国に先がけて外部評価を実施し、 また私たちの属する理学部は全国理学部のトップを切っ て大学院重点化を行うなど、様々な自助努力を続けてま いりました。 もちろん、より抜本的な国立大学の改革が必要なことは、 申すまでもありません。しかし各界識者の皆様が随所で 表明しておられます通り、今回の法人化に対しては、私 たち教育研究の現場に身を捧げる立場からも、深い懸念 を禁じえません。国の長期展望の礎は、教育を通じた人 材の養成であり、また長期的に見て、科学技術立国とし ての日本の経済と産業の基盤を支えるものは、研究者に よる自由で創造的な基礎科学の研究活動であります。こ の重大な意味をもつ教育と学術研究は、国家百年の計が あってこそ成り立つものであり、「中期目標・中期計画」 という近視眼的な視点では、とうてい良く律し切れるも のではありません。じっさい今回の法人化の手本となっ たイギリスでは、制度改革に伴う問題点が徐々に噴き出 しつつあり、深刻な反省の声が上がっていると耳にして おります。  今回の法案では、私たち理学系研究科のホームページ で指摘していますように、将来に深刻な影響を及ぼす可 能性のある数多くの重大問題が、未解決のまま積み残さ れています(*)。国家百年の計を無視してH16年から法人 化を強行しますと、明治維新以来、終戦の大混乱も乗り 越え諸先輩が営々として築き上げて来た、世界に誇る日 本の高等教育と学術研究の体制は危機に瀕し、わが国の 将来に対し、とり返しのつかない重大な過誤を招く危険 が高いと危惧します。もちろん私たちは、いかなる場合 にも、教育と学術研究という高貴な使命に全力を尽くす 所存ではありますが、賢明な議員の皆様方には、ぜひと も叡慮を尽くして頂き、国家の未来をこのような危険に 曝すことを未然に回避して頂きますよう、ここに強く要 望いたします。

* http://www.s.u-tokyo.ac.jp/index-ja_ip.html

東京大学 理学系研究科 物理学専攻 教授 牧島一夫他10名