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『東京新聞』2003年6月26日付(1面および29面の全文) 『東京新聞』2003年6月26日付 法人化で数百人天下り 国立大「役員」に官僚出身者 交付金や業績評価 国との調整役に 大学側構想 国立大学などを国の行政機関から離す来春の独立法人化に伴い、各大学に新 設される役員ポストに、文部科学省などの官僚出身者が多数選任される見込み であることが二十五日、大学関係者らの話で分かった。国からの予算獲得など をめぐる大学間競争に備えるためで、こうした「天下り」は全国で数百人規模 に上るとみられる。法人化は大学の自主性を高めるとされるが、経営の管理や 立案能力に乏しい大学が、官主導の運営に陥る懸念も広がっている。(=関連 29面) 法人化後は、学長と学長が任命した理事、文科相が任命した監事が役員となっ て、民間の経営手法を取り入れながら大学経営を主導する。 役員数は大学の規模などによって異なるが、一大学につき四−九人。今秋の 統合後の八十七大学・二短大で、計五百三人が予定されている。 大学関係者らによるとこの役員ポストに文部科学、総務、財務など各省庁の 官僚出身者を迎える構想がある。予算として配分される運営交付金の配分や、 業績評価などを握る国との調整役として、転換期の”即戦力”とするためだ。 法人化法案はまだ参議院で審議中だが、既に「いい人材がほしい」と大学側か ら打診を受けている省もある。 例えば、国立大学のモデル校といわれる筑波大の場合、役員数は最大の九人 だが、全員、副学長の兼務ではなく学外者を予定している。「このうち数人は、 マネジメントや財務などにたけた官僚出身者が見込まれている」(同大関係者) という。 複数の大学では経営力アップのため、文科省から出向中の大学事務局長を、 理事(役員)に「格上げ」する案も浮上しているという。 ***** (29面) 官主導 揺らぐ自主性 大学は「パイプ」求め 国立大法人 天下り問題 『転換期、仕方ない』 国立大学法人化を前に明らかになった、官僚出身者の役員ポストへの大量 「天下り構想」。霞が関のある省の幹部は「既に大学側からの派遣要請が来て いる」と認めた。法人化後は業績評価と予算配分が連動し、大学の経営能力が 問われる。「失敗すればスクラップもあり得る」という不安と危機感が、天下 り先を求める官側の思惑と一致し、国との”パイプ”を求める動きにつながっ ている。大学の自主性と独立性を揺るがしかねない構想にも、大学関係者から は「転換期を乗り切るには仕方ない」というあきらめの声も聞かれる。 「背に腹は代えられない」とある大学の幹部。「今の大学に経営や計画立案 のプロは少ない。立ち上がりの過渡期に、国とのパイプや運営のノウハウを持っ た官僚出身者が、経営の中枢に入るのは仕方ない」。官僚を役員として迎える ことが大学にとって、もろ刃の剣であることを知りながら、そう話す。 別の大学関係者は「問題は最初の中期計画が終了する六年後」とみる。一度、 「官」が得たポストは経営が安定した後も”後輩”に引き継がれ、指定席とな る可能性が十分にあるからだ。 来年度予算の概算要求に向けて、各大学が見積もった役員(学長、理事、監 事)の給与や諸手当などの人件費の試算では、学長や理事が約千九百万−千七 百万円、監事が約千四百万−千三百万円となっている。こうした多額の支出は 小規模な地方大学にとっては負担が重く、副学長が理事を兼務するケースも多 い。ある大学の教授は「役員の人件費は、将来、大学にとって重い負担になる。 教授のリストラや授業料値上げなども検討されることになるだろう」と懸念す る。 一方、官の側。ある省の担当者は「私たちだってばかではない。世論の批判 がある中で、簡単に天下りができるとは考えていない」と言う。 しかし、別の省の幹部は「法人化で失敗すれば、大学経営陣の責任追及もあ り得る。官僚出身者を役員に迎えることを天下りとみるかどうか、評価は分か れると思うが、要請があれば、大学側が求める人材を派遣することにつながる だろう」と、中央省庁が人材供給源になるのは必然、との見方を示す。 絡み合う大学と官の思惑。こうして官主導のレールが敷かれていけば、大学 改革をうたった法人化のあるべき姿をゆがめることになりかねない。 |