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独行法反対首都圏ネットワーク

国立大学法人法案にかんする参議院での徹底審議を求めます

                       2003年6月18日
                          岐阜大学地域科学部教授会


わが国の学術研究と高等教育にとって多大の影響をもつ「国立大学法人法」案は、衆
議院での審議に続き、現在参議院で審議中でありますが、私たちにとって看過できな
い重要な問題が少なからず明らかになり、改めて多くの国民の関心を呼ぶところと
なっています。
昨年春に文科省の「国立大学等の独立行政法人化に関する調査検討会議」の最終報告
である「新しい『国立大学法人』像について」が公表された折、私たちは、数点にわ
たる危惧を表明し、関係諸機関に慎重な対応をお願いいたしました(別添資料参
照)。国立大学の多くの教授会などから同様の危惧や疑念が表明されたことも周知の
とおりです。
しかし、本年2月に国会に上程され、5月に衆議院を通過した「国立大学法人法」案
は、残念ながら、先の最終報告に対して示された大学関係者の疑念をはらすものでは
なく、かえってそれ以上に大学の教育・研究に混乱をもたらしかねない問題を含むこ
とが明らかになってきました。衆議院文科委員会が法案採択にあたって採択した「付
帯決議」がかなりの論点にわたってその運用における留意事項に言及していること自
体、すでに法案に深刻な問題点が孕まれていることを現わしているといえないでしょ
うか。
法案自体の問題もさることながら、例示的にあげるだけでも、@「法人化」への移行
を前提とした個別大学における対応は複雑かつ混乱を極め、必要な財政措置もないま
まに経常の教育研究費へのしわ寄せをもたらし、A評価システムが重複し、評価基準
が不明瞭であり、「中期目標・中期計画」への国の関与や時の政策的判断により学問
の自由が影響を受けることがないのかという疑念が残り、Bさらには評価結果が個別
大学への資源配分にどのように反映するのかも明らかにされず、C労働安全衛生法や
労働基準法の適用対象となることにともなう現場での混乱が深刻化し、D非公務員化
にともなう教職員の身分保障の不安定化への危惧が払拭されず、E大学ごとの膨大な
負債が公表されながら責任ある対応策が明らかにされないなどの問題があるなか、現
在各大学は法案成立以前から、苦慮しながら、その対応に追われているのが実情で
す。法人化準備のための必要な財政的手当がなされないままに経常予算から捻出され
る財政負担はふくれあがり、膨大な法人化移行の準備の仕事を前にして、教員の研究
・教育時間を削っての対応や事務系職員の長時間労働は、その肉体的精神的負担ばか
りか、学生指導などにもきわめて深刻な事態ももたらすに至っています。
法案成立後において「必要な対応をする」ということになれば、それは「走りながら
手をうつ」「試行錯誤でやる」ということになります。わが国の大学と高等教育の根
幹にかかわる重大な問題がそうした手法で措置されるとすれば、教育・研究の現場で
の混乱は予想すらできないほどの深刻なものとならざるをえません。それは、学術研
究はもとより、学生にとっても、地域社会にとっても、取り返しのつかない深刻な結
果をもたらすことになります。「拙速主義」は、これを厳に戒めなければ、必ずや後
に禍根を残すことになります。
私たちは、大学において教育・研究に携わり、その活動を通じて社会に寄与すること
を本務としています。その現場において、現在と将来にわたって責任を果たしていか
なければなりません。関係諸機関にあっては、こうした立場からの私たちの苦慮や危
惧をご理解いただき、この法案にたいして慎重かつ責任ある対応をお願いするもので
す。