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独行法反対首都圏ネットワーク

☆ ひと  大学改革を問う元東大副学長の同大職員組合委員長
           小林正彦さん(60)  
 .『朝日新聞』2003年6月26日付 ひと
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『朝日新聞』2003年6月26日付

ひと

大学改革を問う元東大副学長の同大職員組合委員長

小林正彦さん(60)

「国民が大学に期待するのは、はっきりものを言う姿のはずだ」

 講座の年次がつかえていたせいで、46歳まで助手だった。助教授を経て教授
になった後、学部の将来構想に携わった手腕を買われ農学部長、副学長と学内
の要職を歴任した。

 そして今、国立大学法人法案への反対運動の先頭に立つ。大学の目標を文部
科学相が決めるなど、行政が大学運営への介入を強めると危ぶんでいる。

 副学長時代、法人化への対抗軸にするつもりで大学自治の基本理念などをう
たった「大学憲章」の原案作成を手掛けた。組合側からも「労使関係を大事に
する」と一目置かれた。01年に任期を終え、一介の教授に戻ったはずが、昨秋、
「重要な時期だから」と周囲に推され、教員と職員でつくる労組委員長に。
「定年まで間がなく、いまさらと思ったが、大学の自治を守りたい」と引き受
けた。

 ただ、国立大の現状に満足はしていない。教員のありようにも批判的だ。
「研究室の狭さと研究費不足を嘆くだけでは、国民に理解されない」「学問の
自由は国民から負託されているという認識が欠けている」

 専門はカイコのゲノム分析。「農家に役立つ学問を」と始めた思いは、「私
は平民主義」という目線の低さにもつながっている。

 法人化を巡る大学側の意見は見えにくい。国立大学協会も正面からの議論を
避けたままだ。「成立したとしても、終着点ではなく、理想の大学への一歩後
退した出発点。だからこそ議論のトレーニングを重ねる」

文 鈴木 京一
写真 高波 淳
(写真略)