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新広島県立大構想 百年の計に焦り禁物  
 .中国新聞』社説  2003年6月23日付 
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『中国新聞』社説  2003年6月23日付

新広島県立大構想 百年の計に焦り禁物 


 広島の三つの県立大学を再編・統合する新広島県立大学構想の「たたき台」
が、県から三大学に示されたことが明らかになり、大学関係者らから批判が高
まっている。学部の学生定員を現在の二千四百二十六人から、三百六人も減員
する思い切ったリストラ案で、特に全学部が解体、分散することになる県立広
島女子大の反発は強く、反対署名運動まで起きている。

 批判の根底には、再編案を示してわずか二カ月で大枠での結論を出そうとす
る県の性急な態度への強い不信感がある。教育という「百年の大計」を決める
問題である。県民の理解を得るためにも、オープンな議論を重ねる必要がある。
大学にも真の県民の大学へ、身を切る決断が求められる。

 再編案は、現在の五学部十三学科から三学部十一学科に統合する。特に女子
大の国際文化学部と生活科学部は解体、学科もコースの一部廃止などで縮小、
分散する。広島キャンパスの主体は、庄原の県立大学経営学部が移転して国際
経営学部となる。県内出身学生が65%、県内就職率が七割近い女子大の本体
が、「消滅」状態でいいのか。

 もともと広島女子大(広島市)、県立大(庄原市)、保健福祉大(三原市)
の統合については、「県立大学運営協議会」(会長・高橋潤二郎慶応大名誉教
授)の昨年十二月の答申で「一大学三キャンパスの統合」「男女共学化」「平
成十七年開学」などで三学長も合意、具体化の検討に入る予定だった。しかし、
三大学と県の調整会議が、大学側が開催を要請しても四カ月近く開かれず、やっ
と開かれた五月十六日の第一回で初めて出された県の再編案だ。県は「固まっ
た案ではない」と説明。しかし、七月には方向性を決定、との日程も提示され
た。

 たたき台提示は「大学の意見を完全に無視」「信義にもとる」と女子大評議
会は抗議している。案を作成した県環境生活部の新県立大学設置準備事務局は
「各大学は自らの再編案しか出せないだろう。全体の再編案は事務局で出そう」
と、提示したという。「案がないと論議もできない」との考えである。しかし、
大学側の了解もなく提示する態度には疑問を感じる。

 定員の三百人余の縮小については「十八歳人口が減ることと現在の実験設備
などから縮小幅を考えた。現状維持なら実質増員になり民間を圧迫することに
もなる」と説明する。

 現在、三大学の年間運営費は約五十八億円。そのうちの三分の一を授業料収
入で賄い、残りは国の交付金と県費である。県立大学を維持するメリットとデ
メリット、財政難の中での負担との釣り合い―。判断材料を示したうえで県民
にも開かれた議論を積み重ねる必要があろう。県の今の姿勢には、リストラの
成果を早く上げたい、との焦りがうかがわれてならない。