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国立大学法人化、文科省立ち往生  参院で法案審議ストップ10日
 .東京新聞2003年6月21日付 核心 
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http://www.tokyo-np.co.jp/00/kakushin/20030621/mng_____kakushin000.shtml

東京新聞2003年6月21日付 核心

国立大学法人化、文科省立ち往生

参院で法案審議ストップ10日

 文部科学省が参院の抵抗に遭って立ち往生している。来春の国立大学法人化に
向け命運をかける「国立大学法人法案」の参院審議で、遠山敦子文部科学相が答
弁に窮して今月十日から審議がストップしたままなのだ。法人化後に各大学が定
める中期目標や計画について、同省が法の成立前に詳細な資料提出を大学側に
「指示」していたことが発覚し、追及側は「国会軽視の事前介入だ。審議未了で
廃案へ」と気炎を吐く。一方、追い込まれた文科相は来週、答弁を訂正する異例
の「おわび」で空転打開を図るが、すんなり再開となるか。(社会部・佐藤直子)

●不測事態

 「ちょっとこれ、委員長、大臣の答弁の内容と出されている資料とまったく違
う。今の答弁がいかに不適切かということを…、これ、今のままじゃ審議できま
せん」

 今月十日の参院文教科学委員会。桜井充氏(民主)が「問題資料」を手にかざ
しながら厳しい口調で遠山文科相に迫った。委員長に審議の中止を求めると、議
場は騒然となった。

 桜井氏が問題にしたのは「国立大学法人(仮称)の中期目標・中期計画の項目
等について(案)」と題したA4判の資料。同省が昨年十二月、法人化を控えた
各大学に対して記載、提出を求めたもので、大学の基本理念や長期目標のほか、
中期計画については数値目標や達成時期なども盛り込むよう指示していた。

 来年四月の法人化を控え、今後の予算査定(二〇〇五年度)にも大きくかかわ
る中期目標や中期計画だが、桜井氏が問題にしたのは、国会審議の半年以上前か
ら文科省が学部学科ごとの具体的な計画事項までを「参考資料」として提出する
よう求めていたことだった。

 「事前関与型の典型じゃないですか」とかみつく桜井氏に対し、遠山文科相は
「参考資料(の提出)は各大学の判断でしている」とかわした。しかし桜井氏が
ひるまず「(資料には)文部科学省に提出してくださいとある。選択事項じゃな
い」と突っ込んで審議は中断。十日後の今も再開していない。

●問題山積

 「明治以来の大学改革」との大号令で進められる国立大学法人化。「大学の自
由度を高める」とし、予算配分に競争原理を導入、大学間競争を促すと強調され
るが、一方で、大学関係者は行財政改革の一環として始まったこともあり、「今
まで以上に文科省の関与が強まる」と猛反発する。

 中期目標や六年単位の計画が大臣の認可となるため、法人化ではなく「文科省
立大学化」とやゆされるゆえんだ。ノーベル賞学者の小柴昌俊東大名誉教授も
「短期で成果の見込めない基礎研究分野などは先細りしかない。研究に対する国
家統制だ」と危機感を強める。

 桜井氏自身、内科臨床医として十年間研究に携わり、今も月二回、仙台市内で
診療に当たる。「母校の大学関係者らは今、中期計画を各学科ごとに書かされ、
その書き直しに追われて仕事ができない状況と聞く。文科省は中期計画について
『漠としたものでいい』と説明していたが、実態は様式や分量まで事細かに求め
られていた」と憤る。

 各大学に配布した昨年十二月は、公式にはまだ各大学が準備に入った段階。中
期目標や中期計画を審議する第三者機関の「評価委員会」が設立されるのは今年
十月だ。桜井氏は「これでは評価委員会は単なる形式にすぎない」と批判。同省
は各大学に提出を求めていた資料を桜井氏の質疑後、回収した。

●廃案免れたが

 「審議ストップ」。先月、衆院は難なく通過していただけに、参院でまさかの
展開にも「審議止まっちゃった」と周囲に軽口をたたく余裕を見せていた遠山文
科相だが、二十日の閣議後会見では「責任を感じている。(審議再開を)足踏み
して待っている」と神妙な顔。

 今国会の会期末は本来なら十八日だったが、イラク関連法案による会期延長に
救われ、現在のところ「審議未了による廃案」は免れた。文教科学委員会の理事
会が調整に入り、早ければ二十六日にも審議再開が見込まれる。冒頭、遠山文科
相が資料の作成経緯などについて説明、「『各大学の判断で』と答弁したのは誤
り」と訂正し、さらに「資料の性格や作成スケジュールなどの面で配慮が十分で
なく、関係者に過度の負担を招いた。国会の審議尊重を怠った」と謝罪を予定し
ている。

 (メモ)国立大学法人法案

 99の国立大学を国の機関から離し、独立法人とする法案。学長の権限を強化
して運営に民間経営の手法を導入したり、文科省に置かれる評価委員会が教育や
研究の業績を評価し、国が交付する運営費の額に反映させる。大学ごとに6年を
期間とする中期目標を定め、各大学は中期目標を達成するための計画を作成、文
科相の認可を受ける。今秋の統廃合により来年4月に法人化されるのは89大
学。将来の民営化を危ぐする大学側の意向を反映して、法案名から「独立」の2
文字は削られた。
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