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『Kei経』(ダイヤモンド社) 2003年6月号 著者が語る 櫻井よしこ 著『論戦2003』明日への道を拓け ---------------------- 改革に対する期待と憤り ---------------------- 本書は過去一年間の『週刊ダイヤモンド』の連載をまとめたものだが、取材 をしていて、この一年間はとりわけ奇妙な溝に直面した。渡るに渡れない溝は、 この国の方向性を示す小泉内閣の「構造改革」のスローガンと、小泉内閣の足 下で進行中の変化の実態が、どう考えても一致せずかけ離れていることから生 じている。といっても、すべての案件に溝があるわけではなく、まだら模様な のだ。 まだら模様は、時期によってそのまだらが変わってくる。“構造改革”に向 かっていると思える変化が見えてきたかと思うと、次の案件ではまったく希望 が持てなかったりする。 拉致問題、道路関係四公団民営化問題、郵政問題、個人情報保護法と住基ネッ ト問題、独立行政法人問題、国立大学法人化問題等々。これらの問題への小泉 政権の対処を見て気づくのは、官僚集団の影響の圧倒的な強さである。首相の 掲げる構造改革の旗印の下で、その旗印とは正反対の変化を官僚集団が起こし ていることに、首相はどれだけ気づいているのだろうか。 一例が国立大学法人化問題である。大学教育を充実させ、学術研究の水準を 高め、学長の権限を強化して、効率的で合理的な経営を進めると謳われた法人 化は、法案を仔細に読むと何のことはない、文部科学省の権益を温存、拡大す ることにほかならないのだ。 大学の学術研究・教育を官僚集団が取り仕切るという世界に例のない法律の 問題点に、首相は気づかないのだ。“法人化”はすべてよいことだと短絡に考 え、個々の法案の内容が見えていないのである。 スローガンのみでは政治はできない。にもかかわらず、従来の政権とは明ら かに異なる小泉首相のスローガンに、つい、よりよい変化への希望を託してし まいがちなのが、今の私であり、私たちである。十のうち八まで期待を裏切ら れているが、二割打率の政権を評価するのか、八割失敗の同政権を非難するの か。 打率二割は、首相の信念の結果というより、状況のもたらした結果か。そう 考えながら、この国の未来を展望すれば、緑美しい季節には不似合いの新たな 憤りが渦巻いてくる。 |