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独行法反対首都圏ネットワーク

文献紹介:『「つながり」の教育』(三省堂、2003年6月10日発行) 
 .木村浩則(熊本大学教育学部助教授) 
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木村浩則(熊本大学教育学部助教授)
『「つながり」の教育』(三省堂、2003年6月10日発行)

http://www.sanseido-publ.co.jp/publ/tunagari_no_kyoiku.html

はじめに

前略

 危機の第二の背景は、こうした〈つながり〉の感覚の喪失によって引き起こ
されていると考えられる教育の諸問題を、政府や文部科学省が、まったく誤っ
た復古的な仕方で解決しようとしていることである。彼らが進めようとしてい
るのは、学校教育を自由化・市場化の波に投げ入れることで、この〈つながり〉
を寸断すると同時に、その寸断された個人を、戦前のように国家という共同体
と民族の伝統という物語(ヒストリー)の中に回収することである。その具体
的なあらわれは、日の丸・君が代の強制、「奉仕活動」の義務化、道徳教育の
強化、歴史教科書の「修正」、そして教育基本法「改正」の動きなどにみるこ
とができる。これらは、「戦後民主主義が子どもをダメにした」という俗論、
強いリーダーや「誇り高き国家」を待望するファシズム的気分と重なって、社
会の中にしだいに浸透しつつある。この流れは、私の職場である大学において
も例外ではなく、現在計画されている国立大学の「法人化」は、個々の大学を
「競争原理」の渦中に投げ入れながらも、大学の教育・研究へのいっそう露骨
な国家介入を可能にする。しかし、こうした危機克服の企ては、危機を災いに
変えるものにほかならない。なぜなら、現代の学校や家族が抱える病理は、
〈つながり〉の喪失それ自体によってだけでなく、この誤った克服の試みとの
矛盾によって引き起こされているからである。

後略