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独行法反対首都圏ネットワーク

『河北新報』 6月 18 日社説 
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「国立大法人化/新生への気概掲げてこそ」

国立大関係者の法人化反対論に触れる機会が、めっ
きり増えた。共感よりも落胆させられる点が多いという
のが、その論法に少し耳を澄ませてみた後の感慨であ
る。

関連法案は既に衆院で可決され、来春の移行日程が
差し迫っている。ここへくるまで地域でなぜ、法人化反
対の動きが広がりを持てなかったか。国立大関係者
はまずそこを顧みる必要がある。

文部科学省による不当な干渉、統制を招く恐れがある
のは確かだ。しかし、国立大側が知恵を絞るべきは、
その排除の手だてではないか。法人化そのものへの
反発と混同しているようにみえる。

「たかが文科省」の意気込みが、あまり感じ取れない
のは寂しい。人事権や財源配分を握られてしまうとい
う「されど文科省が」の不安が前面に出すぎていない
か。

国の直轄からそれぞれに独立した後、どう連携すれ
ば文科省の過剰介入を阻止できるか。その課題へ
の取り組みと併せて、自己改革の決意、新生への気
概を示してほしい。

参院に審議を移した法案が成立すれば、来年4月、
89の国立大学法人が生まれ、約12万人の教職員
は非公務員になる。

行政改革の一環として論議が始まったことへの不満
が、今でも大学側には根強いようだ。しかし、学内の
事務組織肥大への批判も含めて、国の組織として
検証対象に織り込まれたのは当然の流れだ。

非公務員化すると自由な研究活動が阻害されると
いう論拠は、よく分からない。私立大や民間研究機
関が視野に入っていないとしか思えない。

「大学の自主的、自律的な運営の尊重、基礎研究
への配慮を求める」。衆院文科委が先月、法案を
可決した際、付帯決議には、こんな文言が盛り込
まれた。

中期目標(6年)の策定や、その達成度合いの評
価に文科省が関与し、それが国の交付金配分に
反映されてしまうからだ。

付帯決議はもちろん、立法府による文科省に対す
る戒めである。しかし何にもまして重要なのは、
「文科省支配」に対抗する大学間の連携だと思え
る。

目標の設定、業績評価のほか文科省からの人事
配置を含めて、批判の視点を共有し、大学側から
今後、文科省に対して要求すべきことを精査して
おきたい。

独立した法人同士で、「競合と協力」が併せ進む。
そんな新たな協調体制の構築に向けて、準備を
急いでほしい。

経済的な利潤に直結しない「基礎研究への配慮」
を最終的に保証するのは結局、社会の理解であ
る。有用性の有無、すぐに役立つかどうかだけが
研究の価値ではないことを、どう語り掛けていくか。
ここでも、それぞれの分野の研究者が、大学を超
えて知恵を寄せ合う姿勢が不可欠だ。

自ら選び取った学問、研究対象の社会的な意義
をきちんと説く。その能力は教育者としても要請
されている。「象牙の塔」を仰ぎ見ていたかつて
の時代と違って、社会はきちんと耳を傾ける。そ
う信じてほしい。

2003年06月17日火曜日