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<社説>法科大学院 これでは司法改革が危ない? 毎日新聞ニュース速報 裁判官、検察官、弁護士の法曹を養成する新しい教育機関、法科大学院(ロー スクール)の設置認可申請の受け付けが文部科学省で始まった。法科大学院制 度の導入は司法制度改革の中核とされるが、取り巻く状況には難問が山積して いるのが実情だ。 受け付けは今月末で締め切られ、11月末の認可を経て、来年4月には法科大 学院が開校する。法科大学院協会設立準備会のまとめなどによると、全国の7 0を超す大学が申請する見通しだが、大学数で6割強、入学定員で7割強が首 都圏、近畿圏に集中しそうだ。 総定員は6000人を超す。改革後の司法試験合格者は3000人なので、卒 業者の約7割を合格させるというもくろみは外れそうだ。だからといって認可 の時点で定員を絞り込むのは筋違いだ。今後の推移を見守るしかあるまい。 学費は今のところはっきりしないが、少数精鋭教育を目指す一方で実務家教員 の人件費がかさむことから年間100万円以上になると見込まれている。それ だけでも志願者の門戸を狭めるのに、地方出身者に不利となる状況は機会均等 を図るためにも、幅広い人材を登用するためにも好ましくないことは言うまで もない。授業料引き下げに努力することはもちろん、夜間コースの開設なども 不可欠だ。金融機関とも連携して奨学金制度を早急に設け、志願者に告知すべ きでもある。 法科大学院に入学するための第一関門となる適性試験については日弁連法務研 究財団と大学入試センターがそれぞれ8月中に実施することになっているが、 各大学院の選抜試験については方法はもとより日程さえ明らかにされていない。 志願者の準備も考え、計画の策定、公表を急がねばならない。 施設や教員の陣容、カリキュラムなどについて、現在の司法試験で多数の合格 者を出している大学ほど優位に立つのは、ある程度は仕方がないとしても、法 科大学院を立ち上げることになった背景に、現行システムへの批判や不満があ ることを忘れては困る。 現在の司法試験は合格率3%以下といわれる超難関で、大学の法学部の講義で は不十分と、受験生の多くは大学在学中から司法試験予備校に通って知識を詰 め込む。大学入試前から通算で10年近くも受験勉強をした者でないと合格で きない、とさえ言われている。 それでは豊かな人格、識見は培われないと、法科大学院では多種多様な人材を 集め、幅広い教養を身に着けさせる代わりに卒業後の司法試験の門を広げる。 同時に、合格者数も増やして市民の司法へのニーズに応えられる態勢を整える、 というのが司法制度改革の目指す方向だったはずだ。それなのに、司法試験予 備校にカリキュラム編成や教員派遣を頼む大学も少なくないという。法科大学 院が予備校化しては改革の意味がない。 法科大学院の行方は、司法制度改革全体の成否を左右する。開校まで9カ月、 関係者は改革の理念を改めて認識し、設立計画全体を再点検してほしい。 [2003-06-17-00:00] |