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独行法反対首都圏ネットワーク

京都府職労府大支部執行委員会声明「地方独立行政法人法案」反対 
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 京都府職労府大支部の長谷川といいます。
 国立大学法人法案の審議の緊迫した様子はよく伝わるのですが、公立大学法人
を狙う「地方独立行政法人法案」の審議はまともな審議もされないまま可決され
そうな状況です。もとは、国立大学が法人化するというなかで、同様の条件をと
いう発想から公立大学法人の構想が出されましたが、独自法案もないまま、「地
方独立行政法人法案」の特例だけで論じられ、大学関係者の参考人質疑もされな
いままで、問題点がほとんどあきらかにされない状況にあります。国立大学以上
に、ひどい状況が公立大学には押し付けられそうです。
 以上の状況に対して、さる6月6日、京都府立大学の教職員組合の執行委員会
で、反対声明を決議しました。
 関係するところに、公開していただければ幸いです。よろしくお願いします。

 「国立大学法人法案」と「地方独立行背法人法案」の廃案を目指して、ともに
頑張りましょう!

 6月13日  長谷川豊(京都府職労府大支部支部長)

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〔支部執行委員会声明〕
公立大学の法人化を狙う「地方独立行政法人法案」に強く反対する!
国会は「地方独立行政法人法案」を廃案にすべきである!

2003年6月6日
京都府職員労働組合府大支部執行委員会

公立大学の法人化を可能とする「地方独立行政法人法案」が、6月5日、衆議院
本会議にて与党の賛成多数で可決され、参議院に送付された。同法案は4月末の
閣議決定後、5月29日に衆議院本会議で趣旨説明、6月3日には同総務委員会
にて質疑、討論が行われた。そこでは民主、自由、共産、社民の野党4党がそ
ろって反対討論を行ったものの、即日採決に付され、自民、公明、保守の与党3
党の賛成により可決された。
まずもって、国会がこの重要法案について、数多くの疑義が呈されていたにもか
かわらず、たった1日の審議で、しかも「国立大学法人法案」の審議にみられる
ような大学関係者の参考人質疑さえも行わずに採決を強行したことに対して、私
たちは強い憤りを覚える。2004年4月導入が先にありきの拙速な審議は断じて許
されない。

同法案は、公立大学のみならず、試験研究機関や水道や鉄道、病院等といった公
営企業事業、保育所や社会福祉施設などの社会福祉事業、その他図書館や公民館
等の公共施設といった地方自治体のほとんどの事業を法人化の対象としている。
これら住民生活や福祉に密接で公共性の極めて高い事業が法人化されることに
は、@経営効率の追求により住民サービスの後退や住民負担の拡大がもたらされ
る、A設置団体(自治体)の長に権限が集中する一方で、住民参加や住民による
チェック機能が失われる、B現教職員は本人の同意もなく自動的に法人職員に移
行し、「非公務員型」法人の場合は公務員の身分を失う、C賃金や労働条件が切
り下げられかねない、といった重大な問題をはらんでいる。
このような「地方独立行政法人法案」を私たちは決して容認することはできない。

また、同法案が狙う公立大学法人には、次のような問題点がある。
(1)まず、同法案は、「国立大学法人法案」と同様、高等教育・学術研究の発
展に重大な支障をもたらすものである。それは、教育研究活動を中心とする大学
の「中期目標」を自治体の長が「定め」、大学に「指示する」(国立大学法人法
案では「示す」)、そして大学が作成した「中期計画」を認可する、さらに自治
体の設置する地方独立行政法人評価委員会が毎年業務実績の「評価」を行い、自
治体の長は6年の「中期目標」期間終了時に業務「継続」の有無を含む検討のの
ち「所要の措置」を講ずるとする。このような制度は、日本国憲法が保障する
「学問の自由」を著しく侵害する危険性を有し、大学における教育研究活動の自
主性・自律性を脅かし、高等教育・研究機関としての大学の有する普遍的な存在
意義や社会的役割が歪められることになる。また、国立大学法人の場合は独立行
政法人通則法とは異なる独自法をもって規定しようとしているが、公立大学法人
の場合はあくまでも地方独立行政法人の「特例」にすぎないという問題を有す
る。なお、公立大学法人の設置に際して、文部科学大臣の認可のみならず総務大
臣の認可も得なければならず、こうした二重の認可制度となることも問題である。

(2)同法案では、公立大学法人の運営組織についてその重要な部分を法律で規
定せず、「定款」という形で自治体の裁量に一切を委ねている。経営審議機関や
教育研究審議機関の構成や運営方法はもちろんのこと、その審議事項も国立大学
法人法案第20条(経営協議会)及び21条(教育研究評議会)に見られるような具
体的な規定が「特例」の中においてさえ全くない。これでは大学の経営や教育研
究に関する重要事項の決定権をすべて設立団体である自治体の長に委ねてしまっ
ており、国立大学法人法案よりも大きく後退した内容と言わざるを得ず、公立大
学法人における「学問の自由」や教育の自主性の尊重の精神(教育基本法第10
条)はないがしろにされている。また、国立大学法人法案では「中期目標」の筆
頭に「教育研究の質の向上に関する事項」を掲げているが、同法案の場合はこの
項目は存在せず、あえて対応する項目を捜そうとすれば地方独立行政法人一般の
目標の一つである「住民に対して提供するサービスその他の業務の質の向上に関
する事項」があげられるのみである。このことから見ても、高等教育・学術研究
機関としての公立大学法人の位置づけや役割を軽視した法案と言える。

(3)公立大学の教職員は法人化した場合、国立大学法人と同様「非公務員型」
とならざるを得ず、法人に移行と同時に公務員としての身分を失うことになる。
すなわち、本人の同意もなく一律に退職が強要される。また、法人自体が業績等
を理由に解散すれば、解雇され、保障も一切ない。教員の場合はさらに教育公務
員特例法の適用外となり、「教育を通じて国民全体に奉仕する教育公務員の職務
とその責任の特殊性に基」(教特法第1条)く身分保障も失うこととなる。とり
わけ、学長や部局長、教員の採用等についての根拠規定を喪失し、「大学の自
治」の核心をなす教員人事の自治の中心的役割を果たす教授会の位置づけを大き
く後退させることになる。
また、法人においては法人化前の賃金や労働条件等は必ずしも引き継がれない。
これらは労使交渉事項とされるが、賃金には能力主義・成績主義といった競争原
理が導入されるばかりか、今日のような財政事情の下では大幅に切り下げられ、
後退する可能性が極めて高い。

(4)法人化は自治体の財政責任をあいまいにするため、大学運営に必要不可欠
な最低限の経常的経費さえも保障されない恐れがある。このことは大学の財政基
盤を大きく不安定化させることとなり、財政危機、行財政改革の名の下に、現在
でさえ十分とはとても言えない教育研究水準を維持し得なくなることは容易に予
想される。経営効率のみが追求されれば、教育研究条件整備の後退や教職員数の
削減、学費の大幅値上げ等が不可避となろう。もしそうなれば多くの住民・国民
の高等教育を受ける機会を閉ざすこととなり、生涯にわたって学ぶ権利もまた侵
害されることになる。

 以上から、私たちは「地方独立行政法人法案」に強く反対するとともに、国会
に対して「国立大学法人法案」とともに同法案を廃案にするよう強く求めるもの
である。
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