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6/10/03 山形大学理学部 品川敦紀 ある大学職組新聞の記事によれば、現在、全国の国立大学に「国立大学法人教職員数試 算基準(案)」なる文書が配布され、概算要求へ向けた経費見積もりがなされているそう です。 ご存じの方もいらっしゃるかとは思いますが、あまりに驚くべき内容ですので、ご紹介 いたします。 ******************* 「国立大学法人教職員数試算基準(案)」なる文書には、運営費交付金要求のための経 費見積もりの算定根拠として、標準教員数という一覧表を掲載していますが、それによれ ば、 分野1(文学、教員養成以外の教育学など)で、200人の学部学生に対して6人 分野2(法学、経済学、社会学など)で、400人の学部学生に対して10人 分野3(理学、工学、農学、薬学など)で、160人の学部学生に対して8人 分野4(家政学、美術、音楽など)で、160人の学部学生に対して6人 分野5(看護学など)で、200人の学部学生に対して12人 分野6(医学など)で、600人の学部学生に対して140人 分野7(歯学など)で、480人の学部学生に対して85人 分野8(獣医学など)で、240人の学部学生に対して16人 一般の共通教育(教養課程)の学生80人に対して1人 医学進学課程などの学生480人に対して7人 という数を記載しています。 この数で計算しますと、私の所属する山形大学理学部では、学部学生1学年約200人 としても、2−4年次分で、標準教員30人、1年次の教養教育学生分で、2.5人(他 学部学生の教養教育担当分をあわせても、おそらく、7人程度)、大学院分で、6人程度 、最大合計43人分程度となります。 現在、理学部には80名弱の教員がいますから、標準運営費交付金の対象となる標準教 員は、全教員の半分程度にしかなりません。 どの教員が標準教員で、どの教員が特別教員になるのかわかりませんが、約半数分の教 員の給与、研究費は、文部科学省のさじ加減でどうにでもできる「特別運営費交付金」に 全面的に頼らなければならなくなり、文部科学省による評価次第では、その約半数の教員 の首が飛ぶか、教員の給与、研究費を半減せざるを得ないという事態にもなりかねない内 容です。 これでは、文部科学省が大学の生殺与奪を完全掌握した管理統制体制です。特に、理工 系学部は、文部科学省の言いなりになって特別運営費交付金を確保しなければ、全く生き ていけないというとんでもないものです。 ***************** さて、そもそも、運営費交付金とは、学生数や教職員数などから算出される教職員の給 与や物件費の経費見積もりから、授業料などの収入を差し引いた不足分を補うものとして 、交付される補助金です。そして、それは、標準運営費交付金と特別運営費交付金に分け られ、それぞれの交付金の対象となる教員(給与と物件費)が、それぞれ「標準教員」と 「特別教員」というふうに説明されてきました。 そして、文科省平成14年10月作成の「国立大学法人(仮称)運営費交付金算定基準(案) 」によれば、 標準運営費の対象としては 支出が 1 大学の管理運営部門の常勤職員にかかる経費と物件費 2 学部、大学院学生の教育に必要な常勤職員にかか経費と物件費 3 標準教員の基盤的研究費 4 学寮などの運営経費 収入が 1 入学料 2 授業料 3 宿舎料(職員官舎料) 4 学生寄宿舎料 となっており、これらの、収入と支出の差額が、標準運営費交付金として交付されると されています。 この説明が今でも生きているとすると、これでは、文部科学省は、医学系を除けば、事 実上、標準運営費交付金は0に出来るシステムとなっています。 つまり、たとえば、学生20人で、授業料、入学料などを合わせれば、1200万円く らいになります。標準教員1人にかかる平均的給与、水光熱費、研究費、事務職員などの 給与、事務経費あわせても、これを大きく上回ることはないと思われます。つまり、収支 は標準教員に関してほぼとんとんということになります。 法経学部では、学生40人に1人の標準教員ですから、2400万ほどの収入に対して 支出が1200万とすると、交付金はおろか、逆に特別運営費交付金の方の減額すらされ かねません。 医学系を除けば、現在の自己収入でまかなえる範囲だけを標準教員として文部科学省が 責任を持ちましょうという事になりますが、これは、責任を持たないことと同じです。 このような、無茶苦茶な文科省統制支配体制が、大学の教育研究をいい方向に導いてい くとは到底思えません。国会議員の方々にも、是非、良くご理解していただければと思い ます。 294685 |