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☆コラム「春秋」 
 .日本経済新聞 2003年6月8日 
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日本経済新聞 2003年6月8日 コラム「春秋」

 官僚の書いた台本と振り付けに従う大臣が、役所では歓迎される。もちろん、
 遠山敦子文科相は、文科省内ではすこぶる評判がいい。特区での新しい学校経
 営の試みにはかたくなに反対し、お役人が大学を牛耳りかねない国立大の法人
 化法案を、自由化のためといってはばからない。

▼国会の論戦でも、質問の核心部には答えず、官庁用語を並べて、追及の矛先を
巧みにかわす。その手際の良さ。台本や振り付けなど不要の身についた所作にみ
える。そう、遠山文科相は、一時期トルコ大使をつとめた以外は、大学を卒業し
てからずっと、文部官僚だった。内閣の一員となった今は違う、はず……。

▼選挙という社会の選択にさらされていない官僚のOGを、その出身官庁を所管
する大臣に据える。2年前の小泉首相のいささか異例な文科相人事は今、評価の
時を迎えている。教育、研究開発、大学など、文科行政は軒並み大転換を迫られ
ているのに、いまだに満足なシナリオはない。

▼明らかに学力低下を示す学力テストの結果ですら、最初は「おおむね良好」な
どとした文科省。ゆとり教育の失敗とその責任は認めず、なし崩しで路線転換を
はかっている。行政の細部にまで精通したOG大臣の手腕は、身内を守るためで
はなく、説明責任を果たす時に発揮してほしい。