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☆読売社説 研究費流用『使いやすい予算』へ制度を見直せ
 読売新聞03/06/04
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 6月4日付・読売社説 [研究費流用]「『使いやすい予算』へ制度を見直せ」

 東京大学の評議会は、大学院医学系研究科の教授が、国の研究費補助金を不正
 流用していたとして停職処分を決めた。
 不適切な経理処理と認定された額は約二千二百五十万円にのぼる。申請目的と
 は異なる研究室改修や掃除用具購入といった使途もあった。
 私的流用はなかったというが、税金の使い方として、あまりにずさん過ぎると
 言えるだろう。
 背景には、公的な研究資金を巡る硬直した運用実態がある。研究者に交付され
 た後も、使い方には、煩雑で厳しい枠がはめられている。
 教授は、不妊治療の国内有数の研究者で、研究資金に比較的恵まれていた。
 だが、研究室の「慣例」として、大学院生たちに、研究の人件費として支払わ
 れたはずの謝金を、研究室の運営費用として拠出させ、流用した。
 主な流用先は、海外の学会への研究者派遣や研究用備品の購入などとされてい
 る。研究に密接にかかわるため、正規に手続きをすれば問題にならなかった。
 規則を守る、という規範意識の乏しさは厳しく批判されなければならない。だ
 が、研究資金制度にも欠陥がある。今回の処分だけで一件落着にはならない。
 同様の例は、ここ数年、三重大や徳島大、神戸大などでも表面化している。東
 大のケースは氷山の一角に過ぎない。
 研究は、独創的であればあるほど失敗も多い。再挑戦を考えたとしても、現在
 のように事前に使途が細かく決まっていると、柔軟に対応できない。
 新薬や新素材の開発のように連日、進歩がある分野で、海外で新たな発表があ
 ると聞いても、すぐ出張できない。
 研究は一年単位で終わらないが、予算は一年ごとに消化しなくてはいけないと
 いう単年度制も、研究者を縛る。実際の研究費交付の時期が年度途中になり、
 研究をうまく進められない例もある。
 日本は、苦しい財政状況の中、公的な研究資金を大幅に増やしてきた。
 うち一割は、独創的な研究を対象とする競争的研究資金だ。機動的な運用が欠
 かせないが、研究活動の本質を踏まえていない点が多い、との声がある。
 国の科学政策の司令塔である総合科学技術会議は今春、研究資金制度の改革案
 をまとめた。研究者が所属する機関が経費を適切に運用するほか、年度間で繰
 り越せるようにするのが狙いだ。早期の予算交付も盛り込んでおり、実施に向
 け検討を進めている。
 予算は増えても、研究現場が使いづらいままでは、日本が目標とする科学技術
 創造立国は難しい。

[2003-06-04-09:21]