独行法反対首都圏ネットワーク |
『東京新聞』2003年5月30日付夕刊 大波小波 競争を前に黙る 国立大学法人法案が今国会に上程されている。要点は、国立大における「経 営」と「教学」の分離、企業原理の導入、「中期目標」策定を通じた文科省の 統制強化等だ。現状では、確かに大学教員は無能だったり偏頗な人格であって もなかなか首にならない。しかしそこだけを見て、リストラに苦しむ世間がこ の「改革」をいい気味だと傍観するのは危険だ。大学は経営体である以前に、 国民的、または世界的な公共財なのだから。 大学の経営が企業化して公費補給が減ると、「いい大学」ほど授業料が上が る(上げられる)。それは社会の階層化を連想させる。また、文科省は国際競 争力の強化を理由に国公私「トップ30」の重点育成(さすがに評判が悪くて、 あとで名称を変えた)をぶち上げたが、これも大学間格差を拡げるものだ。 大学「改革」に伴う、あらかじめ方向の決められた膨大な書類作成作業を通 じて、大学教員に「服従」が身体化していると言う人もいる。「自助努力」と いう新自由主義的なスローガンの下に、いまやほとんどの人々が過度の競争主 義にさらされている。その中で、せめて大学人は、世間といい意味で「ずれ た」、批判力のある存在でありたいのだが。 (教授会) |