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独行法反対首都圏ネットワーク

☆「大学の将来を考える」集いの報告
  日本ジャーナリスト会議神奈川支部
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--JCJ(日本ジャーナリスト会議)神奈川支部通信から転載--


市場主義化と国家統制とを目指す?
国立大学法人化法案反対院内集会から
                      
 
 5月7日、衆議院第二議員会館で、「大学の将来を考える−国会議員と大学教職員による討論の集い〜いま、国会で審議中の「国立大学法人法案」を考える〜」という院内集会が開かれた。主催は独立行政法人反対首都圏ネットワーク事務局で、60人ほどが参加した。
 法案に反対している野党議員も出席し、審議日程について報告した。
 大学関係者を主な対象とした集会であり、概説的な講演はなく、田端博邦氏(東京大学)の報告も運動経過をふまえた実践的なものだった。
 参加者の多くは国立大学の教職員で、各大学の事情が語られた。
 それぞれの発言を総合してわかったこの問題の特質を整理してみる。
 「国立大学法人化法案」は、行財政改革の一つ、特殊法人の独立法人化と深く関わって登場してきた。その背景には「大学改革」を求める社会の漠然とした期待がある。
しかし政府提出の法案は、大学の産業化を企図するものの、従来の大学自治を支える諸制度は廃止する。研究・教育を促進する効果については大学関係者から疑問が出されている。
 会場発言で「学長に、国立大学協会(国大協)は間接方式に反対してきたのではないかと質問したが、実際の運用で不都合はなくせる趣意の無責任な答がかえってきた」というものがあった。間接方式とは国立大学それ自体が法人になる(直接方式)のではなく、国立大学を設置する法人を設立するもの。国が直接国立大学を設置するのではなくなり、国の責任が薄まる反面、産業界出身の法人役員が大学の教育研究に介入する事態を危惧されている。
 大学の「評価」も問題とされる。ある教員養成系大学からの参加者は「教職課程履
修者中、教員採用試験を受験した学生数が大学の実績評価とされる」と、先行する動きを報告した。外形的で意味の乏しい評価基準がまかり通ることが予想される。大学運営にも民間企業のような厳しさを導入するという建前ではすまない実態がうかがわれる。
 法人化によって大学にも民間並みに労働基準法や環境衛生基準が適用される。しかしその準備は間に合わず、国大協では適用の先送りを求めるようだ。
 会計の変更も膨大な作業が必要で、法案が可決されないうちから事務準備に忙殺されていることも報告された。
 現場の実情を把握した上の改革でもないようだ。東大工学部の職員から「プラス
ティックをはんだ溶接しようとしたり最近の学生は素人っぽい。しかし職員数は大幅
に削減されている」と発言があった。すぐに産業界のニーズに応える研究が優先され、基礎研究がおろそかにされる恐れもあるとされる。
 反対運動は急速に盛り上がって、意見広告募金の取組み、飛行船での宣伝の取組みが報告された。
 ただ国大協の当事者能力のなさをはじめ、大学人の問題意識の低さも指摘された。
ある議員からは「各大学を訪問して意見を聞いてきたが、自分の大学の利益が守られればよいという態度がうかがえ残念だった」と厳しい声もあがった。
 子どもと教育の問題に取り組む市民活動家からは「この法案の後には教育基本法改悪が控えている。受験生を持つ親など広く国民一般に届く訴えを期待する」との発言があった。

保坂義久(日本ジャーナリスト会議神奈川支部)