「地方独立行政法人法案」による公立大学法人化に反対する声明
 
 
2003年6月3日 大阪府大学教職員組合
 
 総務省は、地方独立行政法人制度の平成16年4月導入を目指し、「地方独立行政法人法案」を4月25日、国会に提出しました。地方独立行政法人法案は、地方行政の行財政改革を目的とする地方独立行政法人制度の中に、公立大学法人を地方独立行政法人の特例として規定し、国立大学が独立行政法人通則法ではなく、独自の国立大学法人法案によって法人化されようとしていることと大きく異なります。地方独立行政法人としての公立大学法人は、国立大学法人法案の審議の過程で明らかにされた大学の自治・学問の自由を保障する制度上の枠組みを、国立大学法人に比べても著しく弱体化させるものであり、大学における自主性・自律性の確立に背くだけでなく、これまで地域の大学高等教育の責務を担ってきた公立大学の発展に重大な影響を及ぼすものです。
 
 法案は、公立大学法人の運営組織について、国立大学法人法の制度とは異なりその重要部分を法律で規定せず、地方自治体の裁量に委ねています。経営審議機関、教育研究審議機関の構成や学長の選考機関などを設立団体が議会の承認を経て定款で定めるとされていることは、憲法23条に謳われた学問の自由、「教育は不当な支配に服することなく」と謳われた教育基本法第10条の精神に反するものです。また法案は、公立大学法人の教員を教育公務員特例法の適用を受けない非公務員としていることを含め、学長・学部長選考や教授会による教員人事の決定、教育課程の自主的な編成、教育研究活動の自主性を保障するしくみを大学が自主的、民主的に決定することを阻害し、大学の自主性・自律性を大きく後退させるものです。
 
 国立大学法人制度においては、中期目標や中期計画を文部科学省が決定・認可することは「世界に例がないこと」と指摘されていますが、公立大学法人の中期目標や中期計画は設立団体(地方自治体)の長が決定・認可することとされ、中期目標、中期計画に基づく公立大学法人の評価については、設立団体が条例で設置する地方独立行政法人評価委員会が評価することとしています。教育研究を担う大学の普遍的な役割と評価が、これまでの大学評価と大きく異なり、地方独立行政法人の枠組みの中で、設立団体によって大きく歪められることが危惧されます。
 
 公立大学法人が公立大学を設置し管理することは、設立団体(地方自治体)の財政責任を曖昧にするものであり、厳しい財政状況にある大阪府をはじめとする地方自治体の行財政改革方針の下で、公立大学の財政基盤は極めて不安定化され、現状の教育研究水準さえ維持することが困難となることは容易に予想されます。また、設立団体の定める中期目標、中期計画によって、効率化の名の下に公立大学法人の教育研究条件の切捨てと教員の削減、大幅な学費値上げが安易に行われるしくみとなり、設立団体の行財政改革方針によって公立大学の教育と研究の発展が阻害されることが懸念されます。
 
 私たちは地方独立行政法人法案に反対し、同法案の審議にあたっては、国立大学法人法案の問題点も踏まえ、法案趣旨も含めて慎重な審議を行うことを求めます。