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☆山大教育学部問題、まだ見えぬ全体像
『山形新聞』2003年5月27日付 
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『山形新聞』2003年5月27日付

山大教育学部問題、まだ見えぬ全体像


 昨年5月の教授会で、山形大教育学部(石島庸男学部長)が教員の計画養成
を断念してから1年が経過した。この間、問題は複雑な経過をたどったが、6年
間の一貫教育で小学校教諭を育成するシステムを取り入れることで大学と県が
大筋で一致、ようやく光が見え始めた。しかし、名称はもちろん、新しい学部
の全体像が依然として不透明。一方で、南東北の3大学間協議が頓挫しており、
まだまだ予断を許さない状況が続いている。

 教育学部の「廃止」に強く反発する県内関係者の先頭に立つ高橋和雄知事は、
26日の定例会見で「明るい方向に進んでいる」として、山形大の姿勢を評価し
た。さらに「文部科学省は(山形大の考えを)相当に歓迎、さらに尊重し、全
国的にも一つの事例として受け止められるのではないか」と持ち上げた。

 山形大、県、山形市の3者が教育学部問題を話し合う3者懇談会が半年ぶりに
再開したことし3月。山形大の仙道富士郎学長は大学院で完結する6年一貫のカ
リキュラムで、高い教養を備えた小学校教員を養成するシステム導入を提示、
難色を示していた高橋知事はようやく矛を収めた。

 これに続く4月の3者懇。沼沢誠副学長は「県の提案に触発された」「県の提
案を踏まえ、総合性、実践性、地域性に力点を置く」と丁寧な説明に努め、県
の提案を最大限に尊重したという姿勢を印象付けた。

 学外の関係者が懸念しているのは、今春になって浮上した大学の案は、昨年
8月に県が提出した独自の試案をなぞった程度にとどまっている点。教員養成
課程を組み込むという新しい学部は名称すら決まっておらず、小学校教員に関
する学科以外の部分については、まだまだ十分な検討が進んでいない。

 小学校教諭を養成する新学科の所属教員は25―30人と想定している。教育学
部の現行定員は102人で、残された教官はどこに行ってしまうのだろうか。

 教育学部のある教授は「学部内の教官は安定した生活、研究環境を望んでい
るが、教育学部の再編問題と間近に迫った独立行政法人化で、自らの身分が危
うくなったと感じている」と指摘する。その半面で「多くの教官が今のままで
はいけないと疑問を感じている。改革の好機を逃してはいけない」と語る。

 山形、宮城教育、福島の3大学連絡会議は昨年5月から中断している。南東北
の「教員養成担当校」を目指す宮城教育大は「山形大から正式な連絡がないた
め、マスコミの報道を通じて山形の様子をうかがい知るしかない」と困惑して
いる。

 教育学部の再編問題で悩む全国の大学関係者が山形大の新システム、さらに
南東北に熱い視線を注いでいる。

「明るい方へ前進」−知事が期待感

 山形大教育学部の存続問題で、高橋和雄知事は26日の会見で「県の提案を相
当検討してもらい、明るい方向に進んでいる」とこの1年間を振り返り、県と
の話し合いに応じて前向きに検討を進める山形大の姿勢を評価、今後への期待
感を表明した。

 質問に答え、高橋知事は「(教育学部の教授会が)昨年5月に突然、教員の
(計画)養成を断念し驚いたが、最近は(仙道富士郎学長の求めに応じて提出
した)県の案を相当検討された経過がある」と強調。「教員養成課程が将来も
継続され、明るい方向に進んでいると思う」と述べた。

 来年度に予定される国立大の独立行政法人化を見据え「(教育学部の存在は)
地域教育にとって大きな意義があるが、今後はさらにかかわりが大きくなる。
人件費、研究費は国から投入されると思うが、研究課題によっては地域で支援
していく場面が出てくる」と続け、積極的に支援していく方針を示した。

 支援内容については、県提案に盛り込んだ財団設置などが想定されるが、知
事は「大学も念頭に置いていると思うが、具体的には(法人に)移行してから
になる」として明言を避けた。

 【山形大教育学部の存続問題】 文部科学省の意向を受けた南東北国立3大
学の教員養成課程再編・統合協議に伴い、山形大教育学部が昨年5月の教授会
で、教員の計画養成を断念、県内で反発の声が高まった。県はその後、6年間
の一貫教育を柱にした試案を提出。山形大は路線転換を強いられ、3月の3者懇
談会で、新しい学部の中に6年間で小学校教諭を養成する学科を設置する方針
を提示、県側の理解を得た。本県内の混乱で、昨年3月に始まった3大学間の学
長協議は休止状態が続いている。