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独行法反対首都圏ネットワーク

語る:静岡大学長 天岸祥光氏(下)  県全域で産学官連携  社会要請に即応 高度の成果還元
 『静岡新聞』2003年5月25日付朝刊
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『静岡新聞』2003年5月25日付朝刊

語る:静岡大学長 天岸祥光氏(下)

県全域で産学官連携
社会要請に即応 高度の成果還元

--- 浜松医大との統合協議の進ちょく状況はいかがですか。
「法人化後の中期計画期問(六年間)の前半で道筋をつけるというスタンスは変
わっていない。統合で特に期待できるのは、工学部と医学部が組んだ医用工学。
理学部の生物系には医学部出身の教員が何人かいるし、基礎医学と基礎生物学は
共通点が多く、一緒に新しい価値を生み出せそうだ。文科系も精神医療などへの
関心は高く、医の倫理などで接点はある」

--- 産学官連携の全県への拡大を活発化させていますね。
「西部で長年の実績がある電子と光はこれまで以上に推進したい。中、東部は全
国屈指の食品、医薬品、化学産業との連携を軸に、一月に静岡キャンパスに設置
した地域共同研究センター静岡分室を拠点に取り組む。文科系が個人レベルで実
践してきたまちづくりなどへのかかわリを、組織的な動きに高めたい」

--- 東海地震対策にも積極的に取り組むとうかがいましたが。
「地域の人が安心して避難できる体制をつくる。毛布や食料などの資機材を備蓄
し、放射線を扱うなど住民が入ってはまずい場所は明示しなくてはならない。ふ
だんからの地域との連携が重要だ。阪神大震災の時、高台にある神戸大には多く
の被災者がやってきた。ロケーションが似ている静大でも同様の事態が想定され
る」

--- 大学が社会と連携する意義をどうとらえていますか。
「大学と地域や企業が互いに相手の持ち物を利用するだけでなく、刺激し合うこ
とで新たな成果を生まないと本当の運携とは言えない。社会二ーズを知って研究
をレベルアツプさせ、さらに高度な成果として社会還元するようにしたい」

--- 法科大学院開設の見通しはいかがですか。
「制度がスタートする来年度の開設を目指し、六月末の文科省への申請に向けて
努力している。静岡大が計画しているのは一学年六十人、専任教員は二十二人規
模。実務家教員が二割程度以上必要なため、県弁護士会に派遣を要請している。
学生に法曹界を身近に感じてもらうためにも、ぜひ法科大学院がほしい」

--- 教養教育に力を入れる方針を打ち出していますね。
「十月に発足する大学教育センターで、専任の教員を置いてレベルアツプに取り
組む。自分の専門分野が実社会と接点を持った時、世の中でどういう位置付けに
なっているかを自覚するために教養教育は非常に重要。総合的な判断力は、専門
だけでは身につかない。そういう教養を身につけた上で、サークルなどを通じて
幅広い人間性をみがき、社会に出てリーダーとなる人材を養成したい」

--- 相次いで発覚した教員の学生へのセクハラ(性的嫌がらせ)にどう対応します
か。
「深刻に受け止めている。セクハラヘの理解を深める研修への教員の参加を徹底
させるなど、防止体制を強化する。学生は教員に対して安心、信頼しているだけ
に、被害に遭った場合、PTSD(心的外傷後ストレス障害)など計リ知れないダ
メージを受ける。教員はたとえ口に出さなくても、先生と学生という力関係が働
いていることを自覚して行動を律してほしい」