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『静岡新聞』2003年5月24日付朝刊 語る:静岡大学長 天岸祥光氏(上) 国立大学の独立法人化 目先の成果より基礎研究を充実 国立大の独立法人化が二〇〇四年度に迫った。静岡大も旧来の護送船団方式 から脱却し、より自律的な研究、人材育成機関への転換が求められている。地 域ニーズの的確な把握と地域連携など、地方大学ならではの課題も多い。効率 化と競争原理にさらされる大学を、どうかじ取りするか。四月に就任した天岸 祥光学長に聞いた。 --- 独立法人化で大学はどう変わるのでしょうか。 「自己選択、自已責任の度合いが強まるということ。外部資金獲得などの民間 感覚や一層の説明責任が求められる。学長や理事による役員会が最高意思決定 機関となリ、その下に経営協議会と教育研究評議会が位置する。大学運営を実 質的に仕切り、大学自治に大きな役割を果たしてきた教授会の位置付けは非常 にあいまいになる」 --- 今国会に提出されている国立大学法人法案をどう受け止めますか。 「国立大学協会が了承した調査検討会議の最終報告に比べ、国の関与が強まっ ているように思う。六年問の中期目標は、各大学の原案に基づいて文部科学省 が決めるが、国策に合わない部分はノーと言う可能性もある。全面的に裁量が 拡大するわけではない」 --- 国からの運営交付金は中期目標に沿った中期計画の達成状況への評価で決 まるようですね。 「評価が文科省の評価委員会と総務省の審議会によるダブルチェックになると は、思いもよらなかった。客観的に数値化されたものだけが対象になリ、短兵 急な成果を求められることが懸念される。基礎研究の衰退が一番心配だ」 --- 教育研究内容のバランスを保つために留意したい点は何ですか。 「学外者が半分以上を占め、中期計画策定や教員の給料決定で強い発言力を持 つ経営協議会が、目先の成果至上主義に陥らないようにしたい。教職員個人レ ベルで重要なのは評価。外部資金獲得や地域連携に積極的な研究分野、人材は 当然必要だが、それだけでは大学の研究や教育の質は向上しない。『稼ぎ』が 悪くても、大学に欠かせない人材やグループをしっかリ評価したい」 --- 法人化への準備を進める中でどんなことを実感していますか。 「民間会社と同じような体制を整える必要があリ、未体験のことが多い。特に 人事労務関係は、全くの素人。これまでは人事院規則に沿っていれば良かった が、今度は非公務員となリ、就業規則を作って対応しなくてはならない」 --- 法人化に向けた準備の進ちょく状況をお聞かせください。 「法人化の準備本部を立ち上げて実務作業に入った。文科省からモデルが出な いため、手探リ部分が多いが、七月までに基本を固める。法人法に問題な部分 もあり、学生不在の設置形態変更という思いは強いが、現実的にはやるしかな い。われわれの裁量で決められることは100%活用し、ソフトランディング させたい」 あまぎしよしみつ氏 東京都出身。東京教育大大学院理学研究科修士課程修 了。専門は宇宙プラズマの研究。国立高専講師を経て1971年静岡大講師、83年 教授。90年理学部長となり、4月から学長。静岡市在住、63歳。 |