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独行法反対首都圏ネットワーク

☆国立大学法人化法案が衆院通過 山陰3大学も対応に懸命
 『山陰中央新報』2003年5月23日付.
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『山陰中央新報』2003年5月23日付

国立大学法人化法案が衆院通過 山陰3大学も対応に懸命


 全国の国立大学を国の直轄から切り離し、法人とする「国立大学法人化法案」
が二十二日、衆院本会議で可決された。来年度に迫った大学法人化に向け、山
陰両県の三大学も、外部評価の導入や組織改革などの対応に懸命。一方で、法
人化後の予算分配や評価システムなど、細かな運用については不確定要素も多
く、戸惑いも見られる。三大学の学長らに法案に対する評価や改革の決意を聞
いた。

 ◆島根大学◆

 競争原理の導入や大学の自主・自立をうたう大学法人化。島根大の本田雄一
学長は「組織の効率運営に取り組むと同時に地域に立脚し、個性を発揮しなけ
れば生き残れない」と地域に活路を求める。

 汽水域や中山間地、古代出雲、島根県が力を注ぐ新素材開発など、地域に密
着し、これまで実績を重ねてきた研究を抽出、戦略的に進める構えだ。

 外部資金を発掘するための支援体制づくりも検討中だが、地方国立大学は、
都市より資金獲得が不利なのも事実。「自助努力はもちろんだが、配慮は必要」
と、今後具体化される予算配分の仕組みを注視する。

 ◆島根医科大◆

 島根医科大の下山誠学長は、従来の大学運営を振り返り「国が面倒を見過ぎ
て悪くなった一面はある」と指摘。法人化のメリットを「学長判断で物事が進
み効率的」と分析し、年度をまたいだ予算執行、講座の再編など、大学の裁量
が増す点に期待を寄せる。

 ただ「法人化は社会に役立つ人材育成、医療人教育の手段にすぎない」とク
ギを差す。今春から、山陰の国立大では初めてとなる教授の任期制を導入する
など、改革を一層加速させる構えだ。

 ◆鳥取大学◆

 鳥取大の道家正■学長も「古臭い役所体質を脱皮しなければ」と、大学改革の必要性を認める。

 しかし法案で気になるのが、文科省が国立大学法人に対し、六年間の達成目
標として示す「中期目標」の存在。「国が大学をコントロールし、自主・自立
を阻害すれは、大学は弱体化する」と運用に気をとがらせる。

 とはいえ、地域貢献や産学連携に取り組む決意は両大学と同じ。文科省の
「21世紀COEプログラム」に選ばれた乾燥地研究など、特色を一層伸ばす
考えだ。

 ◆教職員組合◆

 島根大教職員組合は同日、法人化法案の白紙撤回を求める声明を発表。中期
目標・計画を通じた文科省の関与を「国家統制」と非難し、産学共同研究が難
しい基礎分野・人文社会科学の衰退などを危ぐする。

 同組合の上園昌武書記長は、日本の高等教育費が欧米の半分にとどまり、現
在も減らされている点を問題視。「予算総枠が減る中での法人化は、大学のレ
ベルアップでなく、淘汰(とうた)にしかならない」と訴える。

 鳥取大学教職員組合の岸武保委員長代行は「教職員の賃金や労働条件、学生
を取り巻く状況がどうなるのか、具体的な情報がない」と、運用方法が示され
ないままでの法案通過に困惑気味。教職員が公務員ではなくなり、組合の役割
が今後重要になるものの「組合組織率は一割以下。労働条件の交渉自体、厳し
い状況だ」と危機感を募らせる。

(注:■は矢偏に見)