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大改革に懸念隠せず 国の介入、地方大の衰退 国立大法人法 共同通信ニュース速報 全国の国立大を国の直轄から切り離して法人化する法案が今国会 に提出され、審議が続いている。文部科学省は「明治以来の大学制 度の大改革」と位置付け「大学の裁量が増し、研究などが活性化す る」と意義を強調するが、大学関係者の間で「むしろ国家の介入が 強まる」などと懸念する声が広がりつつある。 ▽賛否で火花 「官僚が強力な権限を持ち、大学への規制が強化される。競争原 理の導入で地方の国立大の衰退を招くのはほぼ確実」。今月七日の 衆院文部科学委員会。参考人の田中弘允・前鹿児島大学長は厳しく 法案を批判した。 一方で、牟田泰三・広島大学長が「ぬるま湯につかっていた面が ある国立大は新しい展開をすべきだ」と支持を表明するなど、大学 関係者が火花を散らしている。 法案が成立すれば、来年四月に短大も含め八十九の国立大学法人 が誕生、約十二万三千人の教職員は非公務員になる。 学長の権限を強化して「トップダウン」経営の実現を図り、個別 の大学債発行も認める。経営を審議する協議会には過半数の学外委 員を置くことなどが柱だ。 ▽「枠内の自由」 「自律的な環境のもとでより活性化し、個性豊かな魅力ある国立 大を実現する」。審議入りの際、遠山敦子文科相は法案の意図を説 明した。 だが、大学関係者からは、文科相が定める「中期目標」制度の創 設などに対し「国が教育内容を決める規制強化だ」との批判が出て いる。 中期目標は、文科相が大学の意見を聞き、各校ごとに六年間を期 間として決定。大学はこれに沿い経営や研究などの中期計画を作成 、文科相の認可を受ける。文科省に置く評価委員会が研究実績など を評価、国が交付する運営費の配分に反映させる仕組みだ。 「大学が自主性を発揮できる余地はあまりない。与えられた枠の 中での自由にすぎない」と、ある国立大学長。 「これからは経営上、外部資金を稼げる研究も重視しないといけ ない」と打ち明ける。 東大職員組合委員長の小林正彦・東大大学院教授は「産業界の受 けが良く、金になる学問ばかりがもてはやされ、基礎研究などは衰 退しかねない。期限を区切る評価からは真に独創的な研究は生まれ ない」と批判する。 どの大学、どの学部でも一律に年間約五十万円だった授業料も、 大学や学部によって変わりそうだ。文科省が一定の範囲を示した上 で、各大学が経営上の観点から額を決めることになる。 財務省との折衝や、大学に配分される運営交付金次第の面がある が「しわ寄せは結局、学生のところにくる」(小林教授)と値上が りを予測する声が多い。 ▽もの言えぬ雰囲気 法案はまだ成立していないが、一方で、各大学は昨年夏ごろから 中期目標の原案づくりなど法人化準備を始めている。 東京外国語大の岩崎稔・助教授は「十回ぐらい書き直しをした。 どの大学も大量の行政文書づくりに追われ、肝心の教育や研究が犠 牲になっている。法人化でこの作業が延々と続くのかと思うとたま らない」と話す。 「交付金配分を考えると文科省にものを言いにくい雰囲気が既に ある」と地方国立大の幹部。 北海道大大学院の辻下徹教授ら国立大教官有志は、法案の賛否を 問う匿名の電子投票を呼び掛けた。全国の国立大の教職員や学生ら を対象に四月二十八日から十日間実施したところ、賛成が七十九票 、反対が二千八百五十一票だった。 (了) [2003-05-12-16:19] |