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独行法反対首都圏ネットワーク

☆広島大学の回答にあたっての要望
 . 2003(平成15)年5月14日  広島大学教職員組合
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広島大学教職員組合は下記の要望を学長宛に提出しましたのでお知らせします。


広島大学教職員組合
書記局      小笠原 亨


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牟田 泰三 広島大学長 殿

2003(平成15)年5月14日
広島大学教職員組合
執行委員長 吉田 修

国立大学法人化特別委員会への広島大学の回答にあたっての要望

 貴職の日ごろのご奮闘に敬意を表します。
 さて、国立大学協会の国立大学法人化特別委員会が5月7日、石弘光委員長名で各国立大学あてに「国立大学法人制度運用等に関する要請事項等について (依頼)」を発信したと伝え聞いております。この文書は法人化後の制度運用について要望事項をまとめようとするものですが、図らずも、次のような重大な 問題を浮き彫りにするものとなっています。

 第1に、現在国会で審議中の国立大学法人法案が、「学問の自由」を制度的に保障する「大学の自治」にとって本質的な問題を持つことが、あらためて明ら かになったことです。

「要請事項」は、「文部科学大臣が中期目標を定めるにあたって、大学の意見を尊重すること」、「文部科学大臣が中期計画を認可するに当たって、大学の自 主性・自律性を最大限尊重すること」、「大学の教育研究の特性を踏まえ数値目標などによる評価を排除」、「効率化係数等による運営費交付金の一律減額措 置の排除」といった、大学の自主性・自律性、財政的自律性、ひいては「大学自治」と「学問の自由」にかかわる内容が挙げられています。

 これらは、裏返せば、本法案によって文部科学大臣が大学の意見、自主性、自律性等を尊重しない選択肢が与えられること、そしてそこに「大学の自治」へ の侵害が懸念されることを示すものです。

 しかし、こうした要請が、現在審議中の法案に対してなされるというのはどういうことでしょうか。すでに法として成立したものに、合憲的な運用を要請す るならともかく、未だ立法過程にあるものに対しては、その法案の文言自体から「学問の自由」を侵害する可能性を排除するよう求める意見書を提出すること こそが、「学問の府」たる大学の社会的使命ではないでしょうか。

国大協として行うべきことは、「学問の自由を守る」という観点から、法案そのものに対する、国大協としての総意をまとめ、意見を表明することである、と 私たちは考えます。

 第2に、労働関係法令の適用猶予・適用除外などを要請しており、平成16年4月1日法人化は、これら法令を潜脱しなければ実現できなくなったことを示 しています。

「要請事項」では、「労働基準法に基づく関係行政庁への各種届出義務に関する運用上の配慮」、「労働安全衛生法の適用に関する運用上の配慮」などを挙げ ています。

 刑事責任を伴う労働安全衛生法の適用に関しては、広島大学においても来年4月1日までに適用環境が調う可能性はほとんどないことが、わが組合員によっ て指摘されています。また、労働基準法が要求する関係行政庁への各種届出にも、単に書類を提出することにとどまらず、有効な届出を欠けば経営者に刑事罰 を科されるものも含まれており、昨今では、これに基づいて摘発された企業経営者に逮捕者さえ出ているものです。これら刑事罰を担保してまで社会が維持し ようとしている制度について、その「適用に関する運用上の配慮」を要請するなどということは、国立大学の社会的信用に関わる、きわめて異常な事態である といえます。

 労使関係についても、就業規則の作成・届出、時間外労働を可能とする36協定の締結・届出などは、その確定に労働者が参与する権利をも含み、その結 果、「良好な労使関係の構築」のための基盤となっている制度です。これらを「運用上配慮する」ならば、国家公務員法と人事院規則のもとから離脱した国立 大学教職員を、一時的にせよ労働条件について無権利状態におくこととなり、出発点において水をさされた労使関係が対等で「良好な」ものになりうるかは、 われわれが大いに懸念するところです。

 要するに、たとえ今国会で本法案が成立したとしても、来年4月1日の法人化はあまりに拙速であることが明らかとなっています。事態の打開は、本来なら 十分な猶予期間と人的・物的措置にこそ求めるべきで、あるいは環境が整ったと判断できるまで国立大学法人化を中止すべきです。そうではなく、労働者保護 ルールの潜脱に求めるなどは、その社会的使命からしても、国立大学が行うべきことではないと考えます。

 このように、国立大学法人法案が本質的問題を孕んでいること、ならびに法人化準備が大学職場の現状と一般的な労働者保護ルールに照らしてもはや困難と なったことが明らかになった以上、全国的にも大きな影響力を持つ広島大学は、その社会的使命を自覚し、法案成立以前に法案成立を前提として「運用」に言 及したり、労働者保護ルールの潜脱要求に協力するといった態度はとるべきではないと考えます。

 そこで、国大協に以下の要請を行うよう貴職に求めます。

    記

・国大協臨時総会を開催し、国立大学法人化法案に対する国大協としての総意をまとめ意見表明すること。
・国大協から文科省に対して国立大学法人化の中止ないし延期を求めること。