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独行法反対首都圏ネットワーク

国立大学の法人化問題」に関する千葉大学理学部の見解 
 .2003年5月6日 
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千葉大学理学部では、本年2月20日に「国立大学法人法案の概要」に
沿った法制化がなされることに強い危惧を感じ、本学部の見解を
表明しました。
この度、新たに "「国立大学の法人化問題」に関する千葉大学理学部
の見解" を公表しましたので、以下にその内容を紹介します。
なお本学部のホームページ(http://www.s.chiba-u.ac.jp)にも、同一の
文章が掲載されています。

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                          2003年5月6日

    「国立大学の法人化問題」に関する千葉大学理学部の見解
        ---「国立大学法人法案」についての十分な議論を!---


 千葉大学理学部では、国立大学の法人化を、今後の日本の高等教育に関わる
重要な問題としてとらえ、当初から多大なる関心を払ってきました。特に理学
をはじめとする基礎科学の教育・研究に焦点を当て、多くの議論を積み重ね、
1999年11月以来時宜に応じて5回にわたり本理学部の態度を公表してきま
した(千葉大学理学部ホームページ http://www.s.chiba-u.ac.jp「独立行政
法人化問題」の項をご覧下さい)。

 最近では、2003年2月10日に文部科学大臣から提出のあった「国立大学
法人法案の概要」(以下「概要」)に沿った法制化がなされることに強い危惧
を感じ、2月20日に以下のような諸点についての見解を表明しました。
  1.設置者が国でなく法人になっている点
  2.教育研究評議会が、教育研究の根幹にかかわる事項の審議機関
    として位置付けられていない点
  3.学長選考に関する点
これらの問題点は、末尾に添付した "「国立大学法人法案の概要」に関する
千葉大学理学部の見解" に詳しく述べましたように、いずれも「基礎科学の
発展」、「学問の自由」、「大学の自治」等に深く関連する重大な問題で
あります。このため、私たちは、これらの問題点について危惧を表明する
とともに、国立大学協会をはじめ、国民各層における十分な議論の必要性
を訴えてきました。

 しかし本年2月28日に閣議決定され、国会に提出された「国立大学法人法案」
(以下「法案」)では、上記の問題点についての私たちの危惧が一層深まった
ばかりか、新たな問題も浮上してきました。それは、「概要」では学部・
研究科・研究所を省令で規定するとされていましたが、「法案」では省令規定
の条文が削除された点です。
 この省令規定の削除は、大学の基礎単位である部局等が法令によって全く
規定されないことを意味します。しかしこれは、長期的・全国的見地から
継続的に維持されることを法令上保証されてきた各部局が、時々の状況と
個別大学の都合によって「自由に」改廃されてしまうことに道を開くのでは
ないでしょうか。このことは、特に基礎科学の学問の継続性・発展性にとって
致命的ともなりかねないと懸念します。
 「法案」には、上記以外にも大変大きな問題が存在します。その1つが財政
の問題です。法人化には移行のために莫大な費用が必要となります。例えば
国立大学教職員の非公務員化に伴い、2004年4月1日からは労働基準法や
労働安全衛生法が適用されます。これに備えるための施設改善費用等は
莫大なものになります。しかし、こうした財政的な負担をどうするのかは、
現在に至るまで明確にされていません。もしこれらの費用が大学の教育研究
のための費用を犠牲にして賄わなければならないとしたら、大学本来の任務
である教育研究に大きな支障をきたすことになります。これに加え、移行の
ための準備作業による負担等も大いに懸念されます。
 次に「法人化」により "規制緩和" になると言われていますが、文部科学
大臣による中期目標の設定、中期計画の認可等は、逆に "規制強化" に
なるのではないでしょうか。また先行して独立行政法人に移行した研究機関
では、優秀な人材を学外から高額な給与で招聘したために、若手の助手を
採用することが難しくなっている例もあると聞きます。この例は、人事面での
"規制緩和" は予算措置を伴ってこそ実現できるものであり、現状の運営費
交付金でこのような仕組みを実現しようとすれば、別の面で "規制強化"
にもつながりかねない危険性を示唆していると考えます。
 以上のように、「法案」には多くの問題点があることを、私たちは改めて
率直に表明するものであります。

 現在「法案」は衆議院文部科学委員会で審議中ですが、多くの委員が
「法案」の本質的問題を指摘しています。今こそ当事者である私たち大学人
は、「法案」についての十分なる議論を行い、社会に向かってそれぞれの
考えを発信する責任があるのではないでしょうか。しかしながら、国立大学
協会においては、今までのところ実質的な議論が行われているようには
思えません。そこで、国立大学協会は、速やかに総会を開催して、「法案」
のもつ問題点を充分に議論し、その結果を広く国民と国会に提示することを
強く要望いたします。

 最後に国権の最高機関である国会に対して、私たちは訴えます。今回の
「国立大学法人法案」は、日本の高等教育の未来にとって、極めて"重い"
ものです。私たちの率直な問題指摘も参考にされ、慎重かつ厳密な議論の
上、国家百年の計を誤らない判断をされることを求めるものです。

(「2003年2月20日の千葉大学理学部の見解」は省略)


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