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独行法反対首都圏ネットワーク

   4.17国大協法人化特別委員会「議事メモ」が明らかにするもの


                                           2003年5月2日 
                                       独立行政法人反対首都圏ネットワーク事務局


 国大協は法人化特別委員会石委員長名で「国立大学法人化特別委員会の検討
状況について」(国大協企第9号)という文書を各国立大学長あてに送付した。
この文書は、「第13回国立大学法人化特別委員会(議事メモ)」と、4点の資料(
1,2,3,5)によって構成されている。既に、広島大学のホームページ
http://www.bur.hiroshima-u.ac.jp/~houjin/agency/specialcommittees/specomsiryou.htm
には、資料1,2,3,5が掲載されているので、ここでは「第13回国立大学法人化
特別委員会(議事メモ)」を末尾に添付する。

  「議事メモ」をみるといくつかの重要な問題が存在することが明らかになる。

 第一に、文部科学省による法案内容の地区説明会で出された質問事項のなか
には、文科省が「十分回答できていない事項」が存在する。それらについては
「時期をみて回答を示したい」と杉野主任大学改革官は述べている。法案の審
議が開始されているにも関わらず、「十分回答できていない事項」が存在する
ことを文科省自身が認めているのである。

 第二に、「議事メモ」では、法制化対応グループから提出された「「国立大
学法人法案」に対する見解」(資料3)について、「「法案の概要」で省令規定
事項とされていた内容を、法案で特段の定めを置かないとしても、特別な問題
点ではないとする法制化対応グループの見解が了承された」としている。しか
し、我々が特別委員会直後に行った複数の特別委員からの聴き取りを基に報告
したように、「「国立大学法人法案」に対する見解」が了承されたという認識
は、特別委員の中では支配的ではなかったのである(4月18日付「国大協執行部
の“逃げ切り”路線、17日の特別委員会で了承されず」及び4月19日付「国大
協法人化特別委員会(4月17日)追加情報」を参照されたい)。

 第三に、「議事メモ」では、「2月24日の理事会決定は、法案が出た段階で
内容を吟味し、特段の問題がある場合には国大協として対応を考えるというも
のであった」と述べている。しかし、「特段の問題がある場合には」という文
言は2月24日の理事会には存在しなかったものである。2月24日理事会の「議事
概要」を正確に引用しよう。そこでは、「法案が国会に提出された段階でその
内容を検討し、国大協として表明すべきことがあれば内容をはっきり示して、
理事会で承認を得て発表するなり、あるいは臨時総会を開催して議論すること
も視野に入れて対応を検討する」と記されている。両者のニュアンスは明らか
に異なっている。「概要」と異なる内容を含む「法案」が提出されながら、
「国大協として表明すべきこと」がないと言い切れないから、「特段の問題が
ある場合には」という表現にすりかえたのであろう。

 第四に、「議事メモ」には、「会長から、国立大学法人化に関する今後の対
応について、ペーパーにより提案があった」という奇妙な文章がある。実は、
長尾会長は特別委員会には出席しておらず、会長提案は事務局長によって代読
されたという。「ペーパーにより提案」とはそのことを意味しているのであろ
う。ところが、「議事メモ」冒頭の出席者の項には、長尾会長の名がある。極
めて重要な意味を持つ特別委員会に、会長が欠席していたことをあくまで隠し
たかったのであろうか。なお、資料4とはこの会長ペーパー提案であり、この
提案が了承されなかったために、同資料は各大学に送付されなかったと考えら
れる。

 第五に、「議事メモ」には、「政府等への要請事項のたたき台が席上で示さ
れた」とある。複数の出席者からの聴き取りによれば、これは、「国立大学法
人制度運用に関する要請事項等」という石特別委員長名の文書である。そこに
は“労働関係法令などの適用猶予、免除措置”を国大協として政府に要望しよ
うとするものであったという。これは、我々に寄せられた「文科省とその周辺
が違法・脱法行為の検討を始めた」という情報(首都圏ネットワーク4月24日付
声明「違法・脱法行為による国立大学法人化強行の検討を開始した文部科学省」
参照)に対応するものであろう。国大協執行部と文科省は一体となって、違法・
脱法行為を準備しようとしているのではなかろうか。


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 第13回国立大学法人化特別委員会(議事メモ)

日時:平成15年4月17日(木)15:OO〜17:00
場所:東京ガーデンパレス 須磨の間
出席者: 石委員長、長尾会長、松尾副会長
     北原、中村、牟田、隆島(代理:兵藤埼玉大学長)、富田、鈴木、
     磯野、佐々木、梶山の各委員
     川村、小早川、森本、若杉、神野、佐藤、北村、佐々木、長木
     の各専門委員

石委員長主催のもとに開会。
議事に先立ち委員長から、代理出席の紹介があった。

[議事]

1.委員及び専門委員の交代について

○ 第8常置委員会鮎川委員長の後任として、広島大学の牟田学長が委員に就任
した旨報告があった。

○ 宮島専門委員の後任として、東京大学の神野教授に専門委員(財務会計グルー
プ幹事)を委嘱した旨報告があった。

2.国立大学法人法案について

(1)文部科学省による法案内容の説明会について

○ 文部科学省高等教育局大学課 杉野主任大学改革官から、国立大学法人法
案に関する地区説明会での質疑事項について、以下のような説明があった。

  ・ 地区説明会で出された質問事項のうち、十分回答できていない事項につ
 いては、時期をみて回答を示したい。それまでは、個別に問い合わせていた
 だきたい。

  ・理事の併任については、法律的な制約は無いが、学部長等との併任につい
 ては、それぞれの職責の重大さに十分留意して判断いただきたい。

(2)法制化対応グルーブの見解について

○法制化対応グループの幹事から、「「国立大学法人法案」に対する見解」
(資料3)について、説明があった。

○この説明にたいし、次のよう意見交換等が行われた。

  ・学部・研究科、附置研究所については、省令では規定しないこととなった
  ため、中期目標の別表に記載することとなる。

  ・省令で規定せず、中期目標に記載することの評価は、いろいろある。省令
  で規定されると国の保障を得たような印象もあるが、中期目標は大学の意見
  を聞いて文部科学大臣が定めるものであり、大学の自主性を国が担保すると
  も言える。

  ・省令事項の改正は、国の方針により毎年行われるが、中期目標に書きこむ
  ことで少なくとも6年間はその組織が保証され、安定性があるとの見方もあ
  る.

  ・各大学の自主性・自律性の観点から中期目標に書き込むきことは望ましい
  とも言えるが、6年間しか保証されないという不安もある。

  ・安定性とコストに対する不安がある。それが保証されれば中期目標に記載
  することでも安心する。

 ・省令ではなく中期目標に記載することに種々の意見はあるが、省令事項と
 しないことに反対しなければならないとも思われない。

○これらの意見を参考に、(資料3)について一部の表現を修正するが、「法案
の概要」で省令規定事項とされていた内容を、法案で特段の定めを置かないと
しても、特別な問題点ではないとする法制化対応グループの見解が了承された。

3.国立法人化に関する今後の対応について

○ 会長から、国立大学法人化に関する今後の対応について、ペーパーにより
提案があった。

○ このことに対し次のような意見交換等が行われた。

  ・2月24日の理事会決定は、法案が出た段階で内容を吟味し、特段の問題が
  ある場合には国大協として対応を考えるというものであつた。法案が出たら
  国大協が何か対応するように一部で伝えられ混乱している。

  ・法案については、先程の審議で本特別委員会として特別な問題は無いこと
  を確認しているので、会長のご提案のように、今後は国会の審議を見守るこ
  とでよいのではないか。

  ・会長提案の流れで対応することは了解できるが、国大協の対応をどうする
  かは理事会マターであり、本委員会で決めることではない。最終的には6月
  総会前の定例理事会に提案し承認していただく段取りが必要である。

  ・会長提案のペーパーは、本特別委員会で、まず議論していただきたいとの
  会長の意向をまとめた内部資料であり、この内容をこの特別委員会で了承を
  いただいて外部に発表するような性格のものではない。

  ・「法案の概要」の段階で臨時総会なりを開催して、法人化を進める積極的
  な姿勢を明確に示すべきだったのではないか。

  ・国大協は今後どのように対応するのか、各学長に情報提供を行うことが必
  要である。

  ・6月の総会において、国立六学の法人化に関して国大協のこれまでの活動
  を総括するとともに、法案が予定する制度に対して、その運用や政・省令事
  項に対する注文や要請を盛り込んで対外的に表明することは、意味がある。

○ 法案については、当面、国会における審議を見守ることとし、本委員会と
しては、6月総会に向けて国大協としての総括的見解を取りまとめる方向で検
討を進めることとした。

○ 総括的見解に盛り込む政府等への要請事項のたたき台が席上で示されたが、
十分調整されたものではなく、本特別委員会専門委員の各グループで検討の上、
次回に正式に提案することとなった。

4.具休的な諸課題への対応について

○ 文部科学省大臣官房 永山企画官から、平成16年度概算要求に関する具体的
事項について、配布資料に基づき次のような説明があった。

  ・16年度概算要求に関しては、5月末までに基礎額調、7月初旬に特殊要因
  (新規事頃)調、8月中旬に概算要求書を各大学から提出していただく。配付
  した資料の基礎額調は、3月中に依頼する予定であったが、諸般の事情で遅
  くなった。

  ・「平成16年度 国立大学法人教職員数試算基準(案)」及び「人件費試算
  単価表(案)はあくまで本調書を作成する上で必要となる試算方法を示した
  ものであり、各大学における実際の配置や配分を規定するものではない。

  ・「標準教職員数」の算定における標準教員数」は、現状を踏まえつつ大学
  設置基準等に必要な修正を加えて設定し、「標準職員数は、現状を踏まえて
  設定した。

  ・各大学における実際の員数と標準教職員数の差は、最終的には特定教職員
  数において調整する考え方である。

  ・人件費試算単価表(案)を用いた人件費の試算では現実の配分より低くなる
  が、特定運営費交付金で調整する予定である。

  ・これらの資料は、数日中に各大学に送付する。

5.その他

(1)日本学術振興会からの依頼について

○ 事務局長から、日本学術振興会学術システム研究センター研究員に関する
依頼(資料5)について報告があった。

(2)次回の会議開催日

調整のうえ各委員に連絡することとなった。