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国立大学法人*経営優先だけでは困る
  .北海道新聞』社説  2003年4月30日付 
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『北海道新聞』社説  2003年4月30日付

国立大学法人*経営優先だけでは困る


 本当に自立した大学に生まれ変わることができるのだろうか。いま国会で審
議が本格化している国立大学法人法案のことである。

 今国会で成立すれば、北大など全国の国立大は来年四月から、国の組織から
切り離され、八十九の独立した法人になる。

 ねらい通りに「個性豊かで魅力ある国立大」(遠山敦子文科相)になるのな
ら賛成だ。いまの大学に改革が必要とする考えに異論はないからだ。

 だが、自主性は十分に尊重されているだろうか。この法案を読むと随所に不
安を感じる。

 まず、指摘したいのは、大学に対する国の統制を排除できるかどうかだ。

 各大学は教育や研究、運営について自己責任で六年間の中期計画をつくる。
それを認可するのは文科省だ。

 中期計画は文科省に設置される評価委員会が達成度を評価し、その結果によっ
て各大学へ予算が配分される。

 評価の仕方に明確な基準があるわけではない。文科省が都合のいいように評
価委を動かし、これまで以上に予算配分が不透明になるようでは困る。

 公正で説得力のある評価の仕組みをつくることだ。評価委も文科省から完全
に独立した組織にすべきである。

 経営力強化のために学長の権限が拡大されるが、ここにも問題がある。

 教育・研究のほか人事など経営全般について学長と、学長を議長とする役員
会が最終決定権を握る。民間企業のようなトップダウン経営が目標だ。

 とはいえ学長が独走し、ワンマン経営になっては元も子もない。

 それを防ぐために意思決定の過程や財務内容を情報公開してガラス張りにす
ることが必要だ。

 役員会や経営協議会に参加する学外者には、経済界だけでなく市民団体の代
表などを加えてはどうだろうか。

 法人化によって大学運営の自由度は増す。例えば民間企業から研究委託を受
け、特許権収入を自由に使える。長期借入金や大学債の発行も可能だ。

 だからといって各大学が一斉に経営優先の方向に走っていいはずがない。

 事業化につながる研究ばかりが重視され、地味な基礎研究やカネを稼ぐこと
ができない人文、社会科学などの分野が隅に押しやられることがあってはなら
ない。

 東大や京大のような研究実績が豊富で施設も整っている大学と地方の単科大
学との格差が広がる心配もある。

 評価の際には地方の大学が地域の教育、文化、産業の基盤を支えてきたこと
も考慮すべきではないか。

 これらの問題の中には運用を工夫することで解決できるものもある。そうで
ない場合は法案を修正することも必要であろう。

 与野党ともスケジュールにとらわれずに十分論議を尽くしてもらいたい。