トップへ戻る   東職HPへ戻る
独行法反対首都圏ネットワーク

☆大教九州【参議院文教科学委員への国立大学法人化、高専独法化法案の廃案の訴え】
 
--------------------------------------------------------------


先程、下記のメールを、文教科学委員会委員に個人名を表記して送りました。

03.5.26
全大教九州事務局

(PS.扇委員と後藤委員にはメールは届きませんでした。)

**************************************
                                               
                                                          2003年5月26日
参議院文教科学委員会委員  各位
 

「国立大学法人法案」と「独立行政法人国立高等専門学校機構法案」の廃案の要請
                          
  貴職におかれましては、日本の教育・文化・科学の発展のため、日々ご尽力されて
いますことに敬意を表します。

  私たち、全国大学高専教職員組合九州地区協議会(全大教九州)は、全国大学高専
教職員組合(全大教、国立大学教職員組合約90団体、国立高専教職員組合約20団体)
に加盟する、九州の教職員組合をもとにつくられています。
  先週木曜日(5月22日)、衆議院本会議で、標記の法案及び関連法案が可決されま
した。これらの法案の多くの問題点が指摘されたのにもかかわらず、衆議院で可決さ
れたことに、強く抗議します。

  参議院文教科学委員会で審議が開始されるにあたり、「良識の府」といわれる参議
院の貴委員会にいて、文部科学委員会で明らかとなった本法案の問題点が十分に審議
され、廃案として頂きますよう、お願い致します。
  全大教中央執行委員会等から、本法案全体の問題点は、指摘されており、貴職のお
手元にも文書が届いていると思います。本要請書では、特に、九州の地方国立大学と
高専の視点から、問題点を指摘します。

  なお、本要請書は、全大教九州全加盟単組および九州地区私立大学教職員組合連合
と国家公務員労働組合九州ブロック協議会の連名で提出します。

この法案が成立した場合、次のような深刻な問題が生じます。
1. 学費の高騰によって、九州各県の若者の高等教育を受ける権利が著しく侵害さ
れます。 法人化後の国立大学の学費は上限を決めるので、大幅値上げはない、と文
科省は文部科学委員会の審議で答えています。そして、その授業料の上限は約70万円
とされています。しかし、限度まで学費が引き上げられた場合、九州では、能力や意
欲はありながら、学費が支払えず、大学への進学を断念せざるを得ない若者の数が増
える可能性があります(内閣府「県民経済計画年報」<平成12年>によれば、九州各
県の「1人あたり県民所得」の全国順位は、福岡県33位、熊本県35位、佐賀県37位、
宮崎県42位、長崎県45位、鹿児島県46位、沖縄県47位と低位の位置にありま
す。)。低額の授業料で高度専門教育を提供する国立高専についても、その独立行政
法人化を契機に、同様の問題が発生することが懸念されます。九州の若者の大学・高
専への進学を困難にするこれら法案の廃案を強く求めます。
  また、日本育英会の廃止と独立行政法人日本学生支援機構への移行も若者の進学・
修学に大きな影響を与えます。日本育英会は、教育基本法第3条第2項により、経済
的理由で修学が困難な若者への支援を行うために設立されていましたが、その精神が
大きく変えられ、家計が裕福でないと奨学金を受けられない、という逆転現象が生れ
ようとしています。このことにも、是非ご留意ください。
  
2. 地方国立大学が統廃合され、国立大学のない県が九州に生れる可能性がありま
す。法人法案では、国が各大学の教育研究の業績評価を行い、その結果によって、運
営交付金が配分されます。つまり、「成果が出ていない」、と国が判断すると、運営
交付金は減らされるのです。「淘汰される大学が出てくるのも、やむを得ないのでは
ないか」との意見が文部科学委員会で聞かれました。運営交付金が減額され、大学が
財政難に陥った場合、法人化された大学は自ら再編・統合・廃校を行うことになりま
す。つまり、国立大学のない県が生まれる可能性があるのです。その結果、これまで
なされてきた大学の地域貢献が出来なくなるだけでなく、地元の若者の中に、進学を
諦める者が増えることが考えられます(地方国立大学の場合、自宅通学の学生の割合
が高いことに是非ご留意ください。)。
国立大学法人法案では、各大学の設置者が各法人となっていますが、高等教育に対す
る国の責任をまったく放棄するものであり、強い憤りを感じます。

3.法人への移行によって国立大学に労働安全衛生法等が適用されます。しかし、文
部科学委員会の審議の中で、多くの施設がその法律に違反していることが明らかとな
りました。九州のある大学の学部では、建物の65%以上が建築後30年以上を経ていま
す。老朽化した多くの建物の改修が、平成16年4月に間に合うとは思えません。も
し、危険建造物と認定された場合、使用禁止もあり得る、と聞いています。その場
合、授業そのものが行えない事態となります。「問題解消のために必要な対策や経費
支弁等の対策を取る」、と文科省は「決意表明」をしていますが、その保障はどこに
もありません。教育研究の基盤整備も進めないまま、法人化を急ぐ文科省に対して、
強い憤りを感じます。

4. 文部科学省による大学や高専の教育研究活動への統制が強化されます。文科省
は、この法案は、国立大学・高専に自律的環境をもたらすもの、としています。しか
し、文科省が各大学の中期目標を策定し、各大学はそれにそって中期計画を作成し、
さらにその上に、その計画の可否を大臣が判断する(大臣の認可)というシステムが
つくられようとしています。法人化によって「大学の自律性」が高まる、という遠山
文部科学大臣の答弁は全くの詭弁であり、自律的環境は決してもたらされません。
  国立高専の場合、全国55の高専を、1つにまとめて、1法人にされようとしていま
す。これでは、自主も自律も、各高専の特色も出ません。中期目標は高専機構法人及
び文科省が指示することになっていますが、教育研究の現場を知らない人が、全国の
各高専の中期目標を設定できるとは思えません。 この法案は、憲法が保障する「学
問の自由」(第23条)、及び、教育基本法が禁止している「教育行政による教育への
不当支配」(第10条)に明らかに違反していることを強く訴えます。

5.地方国立大学や高専が官僚の天下り先となり、人事面からも文科省の統制が強化
されます。文部科学大臣が大学ごとに監事2名を任命することになっています。先行
の独立行政法人では、そのポストが関係省庁の官僚の天下り先となっており、この点
も国会で批判が出ています。高専の場合、校長及び高専機構法人役員は、文科省の天
下りポストとしてさらに流用されやすくなります。 現在、多くの問題を抱えつつ
も、地方分権化が進行していますが、国立大学や高専については、中央集権化が進め
られようとしているのです。

貴職におかれましては、地方各県の実状やこの法案がもつ問題点を是非ご省察いただ
き、「国立大学法人法案」「独立行政法人国立高等専門学校機構法案」及び関連法案
を廃案としていただきますようお願い致します。


・全国大学高専教職員組合九州地区協議会議長 気賀沢忠夫
九州工業大学教職員組合委員長 坂本哲三/福岡教育大学教職員組合委員長代行 鈴木
典夫/九州大学教職員組合委員長中江  洋/佐賀大学教職員組合委員長 白武義治/
長崎大学教職員組合委員長 宮原 彬/長崎大学医学系教職員組合委員長 松本逸郎/
熊本大学教職員組合委員長代行 堀 浩太郎/大分大学教職員組合委員長 西本一雄/
宮崎大学教職員組合委員長 野中善政/鹿児島大学教職員組合委員長 山根正気/琉球
大学医学部職員労働組合委員長 比嘉元子/国立有明工業高等専門学校教職員組合委
員長 新谷肇一/国立大分工業高等専門学校教職員組合委員長 工藤康紀/国立都城工
業高等専門学校教職員組合委員長 剣田貫治/福岡女子大学教員組合執行委員長 馬塲
弘利/長崎県立大学教員組合委員長 綾木歳一/鹿児島県立短期大学教職員組合執行
委員長 長谷部 剛/
・九州地区私立大学教職員組合連合執行委員長 山口一生
・国家公務員労働組合九州ブロック協議会議長 南部祥隆


以上