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独行法反対首都圏ネットワーク

「平和と民主主義」の確立に背く危険な「国立大学法人法案」の廃案を強く求める(声明)

 

 現在、国会において国立大学法人法案(以下「法案」)とその関連法案が審議されている。日本と世界の平和と民主主義の確立を願って活動を重ねてきた私たちは、この法案について「平和と民主主義の確立に寄与するか否か」という観点から検討した結果、以下の如く、「寄与する」どころか、全く逆の結果をもたらす危険性があるという結論を得た。

 第一に、この法案には、大学の自治を保障し、大学における民主主義の確立をいっそう促すどころか、全く逆に、大学における民主主義の確立に明らかに背く内容が含まれている。そもそも、大学の自治とは、大学が政治・宗教等の介入を排して、大学構成員の総意に基づいて教育・研究の自由を行使することであり、日本国憲法第23条に規定された「学問の自由」の制度的保障となるものである。この「大学の自治」「学問の自由」の確立の如何は、その国の民主主義確立のバロメーターと言っても過言ではない。

 しかるに、法案は、(1)国立大学法人が6年間で達成すべき「中期目標」を文部科学大臣が定め、法人が従わなかった時は役員が過料に処せられる(2)学長に権限を集中させ、トップダウンの経営方式を目指している(3)学長選考は当の学長も参加する少数の学長選考会議により行われる(4)「役員会」「経営協議会」に学外者を参加させる(5)文部科学省に置く評価委員会による評価に基づく予算配分によって、大学や教育研究組織を再編する、などの条項を含んでおり、これらは、どれひとつをとっても、大学の自治・学問の自由の確立を逆行させる内容となっている。

 第二に、この法案の成立・施行は、平和の確立に貢献するどころか、全く逆に、戦争遂行のために国立大学の研究・教育を変質させる危険性をはらんでいるということである。第2次大戦後、日本国憲法の下で、大学は、平和の確立のため、教育・研究の面でも、平和運動の面でも、重要な役割を果たしてきた。しかるに、法案は、上記のように、大学の目標決定や評価を大臣や学外の企業人等が行うことによって、国立大学における教育・研究を国策に添った方向に誘導・さらには強制する役割を果たす危険性がある。戦争と平和の問題では、戦争に協力したり戦争を推進する政策を批判して平和確立を志向する教育・研究は、たとえ当初は可能であっても、軍事につながる企業人や国の「評価」が行われれば、直ちに不可能なものとならざるを得ない。

 米国のアフガニスタン・イラク侵略戦争への協力、有事立法の制定、日の丸・君が代の強制、首相・閣僚らの靖国神社参拝、「愛国心」の強調、教育基本法の改悪、そして第9条を中心とする日本国憲法の改悪・・・今まさに急ピッチで「戦争をする国づくり」が進められている時、上記のような危険性を持つ「国立大学法人法案」が提出されていることは、決して偶然ではない。

 私たちは、このような重大な危険性を有する法案を、直ちに廃案とすることを強く求め、ここに声明する。

2003年5月12日

平和と民主主義のための研究団体連絡会議

幹事団体会議