2003年5月12日

国立大学協会会長

長尾 真 殿

日本国家公務員労働組合連合会

中央執行委員長 堀口士朗

 

労働基準法、労働安全衛生法の「弾力的運用」要請をやめ、脱法行為的な法人化準備を中止することを求める申し入れ書

 

 貴協会の国立大学法人化特別委員会は石弘光委員長名で、各国立大学にあてて「国立大学法人制度運用等に関する要請事項等について(依頼)」(5月7日付)を発信し、労働基準法、労働安全衛生法等関係行政庁への各種届出義務に関する規定及びこれに関連する罰則規定の適用をはじめとする諸法令の適用に関しては、当面は、各大学が法人化へ移行する経過的期間であることに鑑み、その準備が整うまでの一定期間、弾力的な運用が図られる」よう関係府省に要望することに事実上同意を求めている。これは、脱法行為の表明であり、言語道断である。改めて指摘するまでもなく、労働基準法は、「人たるに値する」労働条件とするため、労働時間等、労働条件の最低基準を、労働安全衛生法は、労働者の生命・健康を守るために、安全衛生の基準をそれぞれ定め、使用者に遵守させるために罰則規定を設けている。罰則を逃れるために、「一定期間、弾力的運用」を求めるということは、労働条件を「人たるに値する」もの以下に切り下げ、労働者・院生・学生の生命・健康を危険にさらしてもかまわないと表明しているに等しい。

 文部科学省と国大協執行部は、法律が成立してもいないにも関わらず、職員に長時間残業までさせて、脱法行為的に、中期計画の策定等法人化の準備を強制してきた。その上、今回、国大協執行部として、「経過期間」であり、準備の時間的余裕がないことを理由に、公然と憲法に基づく労働者保護法規に挑戦してきたのである。国立大学の法人化による、学問の自由、大学の自治の侵害、減量化の押しつけなど根本的問題点が明白になってきている。関係者との協議・合意形成もないままに2004年4月1日法人化のスケジュールを最優先したことから、法人化作業もまた脱法行為をしなければできないのである。このような法案は差し戻すしかない。国大協執行部は、脱法行為までして、文科省の国立大学法人化準備に手を貸してはならない。法案審議の重要段階を迎えた今日、国大協は、少なくとも会の総意として国会に徹底審議を要望し、大学と学問の将来を誤らせないことである。そうしたことから、我々は貴職に下記事項を申し入れるものである。

 

 

1.労働基準法、労働安全衛生法などの適用除外・猶予等を求めないこと。

2.国立大学関係者の合意のない国立大学法人化関連法案の差し戻しを求めること。少なくとも、国会に徹底した審議を求め、すべての問題点を明らかにさせること。

3.脱法行為的に行われている法人化作業を中止すること。

以上