2003年5月7日

衆議院文部科学委員会委員長、理事、委員 各位

 

 

「国立大学法人法案」と「独立行政法人国立高等専門学校機構法案」

の廃案の要請

 

全国大学高専教職員組合九州地区協議会

 議長

気賀沢忠夫

 

 

九州工業大学教職員組合

委員長

坂本哲三

 

 

福岡教育大学教職員組合

委員長代行

鈴木典夫

 

 

九州大学教職員組合

委員長

中江 

 

 

佐賀大学教職員組合

委員長

白武義治

 

 

長崎大学教職員組合

委員長

宮原 彬

 

 

長崎大学医学系教職員組合

委員長

松本逸郎

 

 

熊本大学教職員組合

委員長代行

堀浩太郎

 

 

大分大学教職員組合

委員長

西本一雄

 

 

宮崎大学教職員組合

委員長

橋本修輔

 

 

鹿児島大学教職員組合

琉球大学医学部職員労働組合

委員長

委員長

山根正気

比嘉元子   

 

 

国立有明工業高等専門学校教職員組合

委員長

新谷肇一

 

 

国立大分工業高等専門学校教職員組合

委員長

工藤康紀

 

 

国立都城工業高等専門学校教職員組合

委員長

剣田貫治

 

 

福岡女子大学教員組合

長崎県立大学教員組合

鹿児島県立短期大学教職員組合  

委員長

委員長

執行委員長

馬塲弘利

綾木歳一

長谷部 剛

 

 

 

 

 

九州地区私立大学教職員組合連合

執行委員長

山口一生

 

 

 

 

 

国家公務員労働組合九州ブロック協議会

議長

南部祥隆

 

                          

 

  貴職におかれましては、日本の教育・文化・科学の発展のため、日々ご尽力されていますことに敬意を表します。

 

  私たち、全国大学高専教職員組合九州地区協議会(全大教九州)は、全国大学高専教職員組合(全大教、国立大学教職員組合約90団体、国立高専教職員組合約20団体)に加盟する、九州の教職員組合をもとにつくられています。

  現在、衆議院文部科学委員会において、標記の法案及び関連法案が審議されていますが、是非、それを廃案にしていただきたく、全大教九州全加盟単組および九州地区私立大学教職員組合連合と国家公務員労働組合九州ブロック協議会の連名で、本要請書を提出します。

 

 

この法案が成立した場合、次のような深刻な問題が生じます。

1.学費の高騰によって、九州各県の若者の高等教育を受ける権利が著しく侵害されます。

  国立大学の法人化にともない学費の大幅値上げが予想されていますが、九州では、能力や意欲はあっても、家計の都合で、授業料70万円が支払えず、大学への進学を断念せざるを得ない若者の数が増える可能性があります(内閣府「県民経済計画年報」<平成12年>によれば、九州各県の「1人あたり県民所得」の全国順位は福岡県33位、熊本県35位、佐賀県37位、宮崎県42位、長崎県45位、鹿児島県46位、沖縄県47位と低位の位置にあります。)。低額の授業料で高度専門教育を提供する国立高専についても、この独立行政法人化を契機に、同様の問題が発生することが懸念されます。

  九州の若者の大学・高専への進学を困難にするこれら法案の廃案を強く求めます。

 

  また、日本育英会制度の改革も、若者の進学・修学に大きな影響を与えます。日本育英会は、本来、教育基本法第3条第2項により、経済的理由で修学が困難な若者への支援を行うために設けられましたが、その精神が大きく変えられ、家計が裕福でないと奨学金を受けられないように変更されようとしています。

 

2.地方国立大学が統廃合され、国立大学のない県が九州に生れる可能性があります。

法人法案では、国が各大学の教育研究の業績評価を行い、その結果によって、運営交付金が配分されます。つまり、「成果が出ていない」、と国が判断すると、運営交付金は減らされるのです。これでは、大学教員はとにかく短・中期で成果が出る研究に走らざるをえません。試行錯誤のあげく、思わしい結果が出ないことも多いというのが研究活動の実態ですが、そういったことがまったく省みられていないのです(このことについては、4月23日の文部科学委員会で赤池、佐和参考人が再三述べられていました。)。

運営交付金が減額され、大学が財政難に陥った場合、法人化された大学は自ら再編・統合・廃校を行うことになります。つまり、国立大学のない県が生まれる可能性があるのです。その結果、これまでなされてきた大学の地域貢献が出来なくなるだけでなく、地元の若者の中に、進学を諦める者が増えることが考えられます(地方国立大学の場合、自宅通学の学生の割合が高いのです。)。

国立大学法人法案では、各大学の設置者が各法人となっていますが、高等教育に対する国の責任をまったく放棄するものであり、強い憤りを感じます。

 

3.文部科学省による大学や高専の教育研究活動への統制が強化されます。

  政府・文科省は、この法案は、国立大学・高専に自律的環境をもたらすものとしています。しかし、文科省が各大学の中期目標を策定し、各大学はそれにそって中期計画を作成し、さらにその上に、その計画の可否を大臣が判断する(大臣の認可)というシステムがつくられようとしています。法人化によって「大学の自律性」が高まるという、遠山文部科学大臣の答弁は全くの詭弁であり、自律的環境は決してもたらされません。

  国立高専の場合、全国55の高専を、1つにまとめて、1法人にされようとしています。これでは、自主も自律も、各高専の特色も出ません。中期目標は高専機構法人及び文科省が指示することになっていますが、教育研究の現場を知らない人が、高専の中期目標を設定できるとは思えません。

  この法案は、憲法が保障する「学問の自由」(第23条)、及び、教育基本法が禁止している「教育行政による教育への不当支配」(第10条)に明らかに違反していることを強く訴えます。

 

4.地方国立大学や高専が官僚の天下り先となり、人事面からも文科省の統制が強化されます。

  文部科学大臣が大学ごとに監事2名を任命することになっていますが、先行の独立行政法人では、そのポストが関係省庁の官僚の天下り先となっており、この点も国会で批判が出ています。高専の場合、校長及び高専機構法人役員は、文科省の天下りポストとしてさらに流用されやすくなります。 現在、多くの問題を抱えつつも、地方分権化が進行していますが、国立大学や高専については、中央集権化が進められようとしているのです。

 

貴職におかれましては、地方各県の実状やこの法案がもつ問題点を是非ご省察いただき、「国立大学法人法案」「独立行政法人国立高等専門学校機構法案」及び関連法案を廃案としていただきますようお願い致します。

 

 

以上