「幹部職員は、全て大学の職員から登用すべきです」

 

2003/04/22

東京大学職員組合 高島悟史

 

 現在、国立大学法人化議論の中で、文部科学大臣の任命権の下に国立大学間等を異動している事務職員について、引き続き現行の運用を続ける方向が検討されています。特に文部科学省は、自らのポストと昇格スピード維持のため、この制度の存続を強く求めているようです。

 しかしながら、現在のように、事務局や病院・図書館事務部の部課長のほとんど全てが本省や他大学の出身者で占められ、大学プロパーの幹部が(部局の事務長・課長等を除いて)ほとんどいないということは異常な組織形態と言わざるを得ません。このことが学内の職員の士気が上がらない最大の原因とも言えるのではないでしょうか。

 そもそも大学の中で幹部を養成し、配置していくことは自律的な大学を作る上で最も重要なことであり、そこで働く職員にとってのインセンティブともなるでしょう。また、これは、本来法人化にかかわらず、大学として実現すべき課題ではないでしょうか。

 

 現在、文部科学大臣の任命権の下に国立大学間等を異動している幹部職員の登用方法には、次のようなものがあります。

 

@ 文部科学省転任試験制度によって本省に転任した後、31才程度で係長、38才程度で大学等の課長(7級)として全国異動となり、41〜42才で8級に昇格することとなるが、この制度の問題点は、一度文科省に転任さえすれば最低大学等の課長にはなれるが、逆にどんなに優秀な大学等の職員であっても、転任試験を受けられなかった者や年齢が過ぎた者は大学等で低い待遇に甘んじなければならないという点である。

 

A    係長歴5年以上で年齢が50才以下の者が課長登用面接制度により、当初は主に高専の課

長として転出し、その後は大学等の課長として全国異動となるのであるが、7・8級に昇格するのが本省出身者よりもかなり遅いという問題や、子どもの受験期等に単身赴任せざるを得ないといった問題がある。

 

 今後は、上記制度を廃止し、課長職以上の者についてもその大学の中から登用することを基

本とすべきであり、仮に本省や他大学からの人材が必要と判断した場合においても、その数は

ごく少数とすべきでしょう。

そして、これをすすめるうえでの過渡的措置として、現時点で上記の方法により登用されて

いる者についての処遇を個別に検討することは当然であり、そのための方策として、現在大学に勤務しているT種職員(「キャリア」)をすべて本省に復帰させるとともに、それ以外の幹部職員については、本人の意向も考慮のうえ出身大学等への異動を行います。また、現在の幹部職員の勧奨による退職も大幅にすすめ、代わりに学内からの登用を図ることも必要でしょう。

 

なお、上記の「転任試験制度」と全国異動によって、本省経験者の昇格スピードは他省庁に

比しても格段に良い状況となっています。今後は文部科学省本省の特権的とも思われる昇格スピードも改めてもらう必要があります。

 

 現段階では国立大学法人法案でも国大協の法人化特別委員会でも、この問題には一切触れていません。この問題を避けて通るのならば、いずれ法人の理事会は文部科学省からの天下り人事で占められるとともに、大学の幹部職員も引き続き本省から送り込まれた人たちで独占されることになりかねないのではないでしょうか。