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独行法反対首都圏ネットワーク

☆  大学はどうなる 法人法案批判《3》
 .2003年4月20日(日)「しんぶん赤旗」 
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2003年4月20日(日)「しんぶん赤旗」

大学はどうなる 法人法案批判《3》
学外者含め学長を選出 強い権限で企業的経営
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 国立大学法人法案は、大学の組織や運営のあり方を根本から変えてしまいます。

 現在の国立大学では、各学部の教授会の代表からなる評議会が学長を選ぶ権限をもち、
全学的な予算や計画も評議会の審議を尊重して学長が決定します。大学が「学術の中心」
(学校教育法)として、教育研究を直接担う教授会を基礎に運営される必要があるからで
す。

教職員の意思を排除

 国立大学法人では、評議会を廃止し、学長を選ぶのは学外者と学内代表の各同数(学長
や理事も参加できる)でつくる学長選考会議になります。そこで選ばれた学長が、法人経
営、教育研究、人事などのすべての権限をもち、重要事項を議決する役員会の理事も学長
が任命します。
 他方で、学長の独走をチェックする機能はありません。法案では、学部長や学長指名の
理事などでつくる教育研究評議会をおき、教育研究に関して審議するとされています。し
かし、予算をどこに配分するか、どんな学部・学科をもつか、教授会をどこにおくかなど
は教育研究評議会の審議事項に明記されず、役員会の議決に委ねられています。
 文科省は、大学が経営責任をはたし「民間的経営手法」を導入するためといいます。し
かし、これでは学長の専決体制です。教職員の多数の意思が排除される運営では、教育研
究の発展は望めません。

大企業圧力で研究中断も

 法案では、法人に経営に関する審議機関として経営協議会をおき、この委員の二分の一
以上は学外者としています。文科省の調査検討会議の最終報告(昨年三月)では、これを
「社会の意見や知恵を大学運営に反映させる」ためとしていました。ところが、法案では
、学則や職員給与、予算を含め経営に関わる事項のすべてを審議するなど、学外者が大学
運営に直接手だしすることになります。想定されているのは、企業経営者や政治家、役人
、コンサルタントなどです。
 さらに、役員会の理事にも、文科大臣が任命する監事にも、必ず学外者(学外役員)を
含めなければなりません。これらの学外者は、経営だけでなく教育研究に関する事項に深
く関与し、議決や監査を行います。これでは、政府や大企業の意向に応じた大学運営がな
され、それによって教育研究が大きく左右される恐れがあります。
 水俣病の原因を解明して注目された東京大学名誉教授の西村肇氏は、大学での研究をも
とに社会的発言をしたことで産業界からの圧力をうけ、公害研究を十五年間にわたり中止
せざるを得なかったとのべています(『水俣病の科学』日本評論社)。こうしたことが、
今度は全国的な規模で、制度的裏づけをもって行われかねません。
 また、すでに独立行政法人となった試験研究機関では、理事や監事の多数を関係省庁か
らの役人の天下りがしめています。国立大学法人が役人の天下りの温床にならない保障は
ありません。
 法案は、「学術の府」としての大学を、学長専決体制の下で企業経営の論理で運営され
る「経営体」へと、変質させるものです。(つづく)